未来の記憶

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 「正気かよ」  「…うん」  「10年後って言ったら、えーっと、俺たち27歳か??」  「私は28だね」  「そっか。4月生まれだもんな」  彼はまだ、誕生日を迎えていなかった。  同じ春の生まれだけど、彼の場合は遅生まれで、18になるにはまだまだ先だった。  ここ10年のことを話した。  高校を卒業した後のこと。  社会人になって、最初に就いた仕事のこと。  彼は面白おかしく、その話を聞いてくれた。  やっぱり、信じてはくれてなさそうだった。  当たり前っちゃ当たり前なんだけどさ?  まるで、遠い昔のことを話してる気分だった。  昨日の今日まで、自分がいた世界のはずなのに。  「俺は?」  「…え?」  「サナが社会人なら、俺は?まさか、ただのサラリーマンとかじゃないだろうな」  10年後の世界で、彼がどうしているか。  その答えを知ってても、すぐには答えられなかった。  ちゃんと言うべきなのかな?って思った。  事故のこと。  あの日、起こったことを。  「…どうなんだろう」  未来がどうなるか。  確かこの頃、この河川敷で、これからのことについてを考える時があった。  もう飛ばないって、自分の中で踏ん切りをつけた日。  …それでも、未来についてはまだ分からなくて。
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