未来の記憶

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 飛び立つ飛行機の音を聞きながら、自分が飛んで行ける場所を探そうとしてた。  彼がもう2度と帰らないんだって思った時、いっそ未来なんて無くなってしまえばいいのにって思う日もあった。  飛ばなくたっていいんだ。  何度も、そう感じた。  飛ぶ必要なんてないんだ。  歩いて行ける場所さえあれば、もうそれだけで十分なんだ。  投げやりだったわけじゃない。  自分のことを、もっと知ろうと思ってた。  真剣に考えようと思ってた。  何もかもしおらしく感じてしまうくらいなら、いっそ——  これからの世界がどうなっていくのか。  そのことを、言葉にしたくはなかった。  彼がいる。  生きて、隣にいる。  そのことを、まっすぐ見ていたかった。  おかしな話だってのはわかってた。  これが現実じゃないにしろ、あり得ないような「話」だって。  「ただの社会人でよかったのか?」  「…へ?」  「…いや、ほら、俺はてっきり、陸上を続けてるもんだと思ってさ」  
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