未来の記憶

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 みんな、あの当時のままだ。  うまくは言えないけど、まるで時間が止まってるかのようだった。  「過去」の世界なんだから当たり前か。  …でも、これからどうすればいいんだろう。  元の世界に帰れる気配もなかった。  顔をつねってもダメ。  目を瞑ってもダメ。  今頃職場にいて、せっせとパソコンを開いてるはずなのに…  「やっほ!沙苗」  視線を上げると、そこにはアカリがいた。  バレー部の子で、同じクラスメイト。  詩穂と同じく、彼女とも仲が良かった。  ただ、詩穂と違って、アカリとは卒業式以来会っていなかった。  ラインでやり取りしたのも、ほんの数回。  別になにかがあったってわけじゃない。  お互い、忙しかったもんね?  卒業式の日、アカリと私は“みなとみらい“の臨港パークにいた。  眠らない夜の街と、色鮮やかな観覧車のライトアップ。  横浜ランドマークタワーが、星空の下に聳え立っていた。  アカリと私は、とくに進路も決まらないままだった。  アカリも私と同じで、田舎から上京してきた子だった。  埼玉県の美里町っていうところに住んでた。  遊びに行ったことはないし、写真で見たことしかない。  一目で分かった。  そこが田舎だってことは。
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