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「…久しぶり」
思わず、そう言ってしまった。
アカリは驚いてた。
その表情を見て、ハッとなった。
アカリにとっては、全然久しぶりじゃないんだってことを。
「…久しぶり?」
「…ああ、いや、ごめん。なんでもない!」
「珍しいね。体育館に来てるなんて」
「そうだね」
「練習は?」
「ええと、今日はもう終わり」
「ふーん。私も終わったとこなんだ。今日はもう早く帰ろうってことになってさ」
「へぇ」
アカリは、ハルのことが好きだった。
そのことを、あの事故の後に聞いた。
アカリからその話を聞くまで、全然気づかなかった。
そんなまさか…って具合にさ?
アカリは、学年でいちばん可愛い。
垢抜けてるって感じじゃなくて、落ち着いてる感じ?
変に気取ってなくて、肩の力は抜けてて。
ふわっと柔らかい髪質に、あどけない声色。
まるで、ヤスリで研いだかのような滑らかさがあった。
ちょっとした笑顔も。
話してる時の表情(カオ)も。
一緒にいて、嫌な感じがひとつもなかった。
周りの人たちが悪いって言ってるわけじゃないよ?
どう形容すればいいかな。
川のせせらぎ?
森林浴?
なんだかそんな感じの心地よさがあった。
すすけたようなさえない色が、どこにも無くて。
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