未来の記憶

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 卒業式の後、一緒に色んなことを語ったんだ。  まだ想像できなかった。  これからどんな大人になっていくのか。  どんな世界が、待ってるのか。  アカリには夢があった。  進路は決まってなかったけど、“誰かの役に立つ仕事がしたい”って。  そんなこと、私は考えたこともなかった。  今だってそうだ。  自分が誰かの役に立ててるなんて思えないし、それがどういうことなのかも。  巨大な貨物線が、みなとみらいの海岸を走ってた。  まだ見えない未来が、茫漠とそこに横たわってて。  「ねえ、アカリ」  「うん?」  「卒業したらさ、何をしたい?」  「へ?卒業??」  「…うん」  「気が早いなぁ。まだ4月だよ?」  「そうなんだけど…」  確かに、そうだよね。  まだ学年が変わったばっかだもんね。  アカリは少し考えた後、こう言った。  「海外に行ってみたい」って。  「…プッ。何それ」  「あ!笑った」  「ごめんごめん」  「一度は行ってみたいよね?パスポートとか必要だけど」  「そういう話じゃなくて。将来のこととか」  「…うーん。まだ決まってないかなぁ」  「そっか」  「沙苗は?」  「…私は」  
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