あの日、あの時

8/16
前へ
/61ページ
次へ
 チャリンッ  軽やかな鈴の音。  ハッとなって振り返った。  見慣れない道の真ん中には、1匹の猫が。  「やあ」  “それ”が音となって耳に届いた時、咄嗟に周りを確認した。  誰?  そう思ったのも束の間だった。  目の前の「猫」が近づいてきては、私を見上げた。  「キミは何しにここへ?」  ………………………………………  ………………………  ……え?    …猫が…喋った……?  そんなはずがないと思い、もう一度見渡す。  だけど、誰もいなかった。  声は女性の声に近かった。  というより、女の子の声に近かった。  周りには人影も、車の音もなかった。  猫はじっと私を見つめている。  …まさか…  恐る恐る、声をかけた。  
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加