あの日、あの時

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 「…えっと」  上擦ったような声の下で、猫は微笑んだようにニャーと鳴いた。  ……なんだ…  ………気のせいか……  (喋るわけないか…)  そう思い、猫の頭を撫でる。  だけど、そんな私をからかうようにクルッと回り、「こっちに来て」と、トコトコ歩き始めた。  …………  ………嘘………でしょ……?  周りの景色が変わったこと。  そのことに対して、少し考える時間はあった。  だけどそれ以上に驚いたのは、目の前にいる猫が、人間のように喋ったことだった。  “喋った”  そう、そんなことあり得るわけないって思うよね?  漫画やアニメの世界じゃあるまいし。  でも、「喋った」んだ。  それは間違いなかった。  空耳なんかじゃなかった。  驚きのあまり、しばらく動けなかった。  その場に立ったまま、歩いていく猫の後ろ姿を見てた。  
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