あの日、あの時

1/16
前へ
/59ページ
次へ

あの日、あの時

 私は、かつての友人のことを思い出していた。  その記憶はもうずいぶんと古く、少しずつ、当時の色や景色が薄れていきつつある。  当時、私は高校生だった。  中学の頃とは違う新しい生活に、新しい街。  田舎育ちだった私にとって、東京の街は呆然としてしまうほど眩しかった。  ”大都会“っていうのを、初めて肌に感じた。  地元から近い広島市もそれなりに大きい街だとは思う。  中四国だと多分1番だろうし、岡山とか山口とかに比べたら、そりゃあもう。  だけど、東京は違った。  まるで別世界だった。  生まれて初めて、ビルが高いと思ったんだ。  空に向かって聳え立つスカイツリーは、同じ日本だとは思えないほど遠く、高く伸びていた。  空の一番端まで、届きそうなくらい大きかった。  「うわあ」と、声が漏れてしまうくらい。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加