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今日も観覧していた一人の男が『絵空事』の前で足を止めた。
「これが話題の絵か…
確かに凄いな!…まるでみんな生きているようだ
しかし、何でこんなに苦しそうに描かれてるんだろう?」
その刹那、『絵空事』が光りだし男はその眩しさに目を閉じた。
「うわっ!」
男は何があったのか把握出来なかった。
「な、なんだ?…何が起こった?」
視力が戻った男は辺りを見回した。
美術館とは違う真っ白な広い空間、周りには沢山の人がいる。
老若男女、人種も性別もごちゃ混ぜに…。
…だが、誰一人動かない。
「あのー、すいませんがここは何処ですか?」
男はすぐ側の人に声をかけたが反応しなかった。
「どうなってんだ?人形…か?
しかし、表情が生々しいな…」
男はその人に触ってみた。
「…えっ!?…生きてる?」
体温があり息もしている。
「これってドッキリですか!?」
揺すっても叩いても何も反応しない。
それどころか、身体は石のように固まっていた。
「…まさか、これみんなそうなのか?」
ざっと見渡しても百人以上はいる。
男は気味が悪くなり、動かない人達の間を逃げるように移動した。
そして男は気付いてしまった。
「…この人、あの絵に描いてあった人だ…」
特徴的な服に見覚えがあった。
『絵空事』の中に描かれている一人だ。
「この人も…、この人もだ!」
その周りの人達もキャンバスに描かれていた事に気付く。
「まさか…、ここはあの絵の中?
嘘だろ…」
男は呆然とし動けなかった。
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