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俺の母ちゃん
「母ちゃんただいま。」
いつもと変わらない笑顔で母ちゃんは帰った俺を見つめてくる。
「今日もちゃんと言いつけを守ったぜ。」
笑顔に向かっていつもみたいに今日の事を色々話して聞かせた。
「そうだ、花買ってきたぞ。」
帰りに通りかかった花屋で母ちゃんの大好きなあの白い大きなラッパみたいな花を買ってきた。
「今日は母ちゃんの誕生日だもんな。」
包んであったフィルムを雑に剥がし、母ちゃんの大事なフランス製のどっかのブランドの花瓶に花を挿し、いつもの場所にそれを飾った。
相変わらずクラクラしてくるような香りだ。
犬のクロが近づいてきて尻尾を振りながら俺の周りをうろつき横に座る。
クロは賢い。俺が母ちゃんに話しかけてる間は絶対に邪魔してこない。邪魔しちゃいけないってちゃんとわかってるから。
正座してる俺にこうやって静かに近づいてきて側でお座りをする。
俺が立ち上がるのをおとなしくじっと待ってる。
「よし、行くか!」
そう言って立ち上がるとクロは途端に俺に飛びかかって来る。早く行こうと催促してくる。
側にあるリードを首輪につけると俺の方が引っ張られるようにして玄関に向かう。
母ちゃんの笑顔の写真に見送られながら、母ちゃんがいつもしてたクロの散歩に今日も繰り出す。
花の香りに混じってフワッと白檀の香りが漂ってくるその部屋を後にした。
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