梨紗子の好きな人

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梨紗子の好きな人

 梨紗子が美術の村瀬先生を好きなのは前から知ってた。  だっていつも俺にその話ばっかしてきてたし。  梨紗子は何かにつけて先生のところに行ってた。  よくある、先生が好きな初恋物語のはずだったのに。  放課後、マンツーマンで補習をすると言い出した辺りから、なんとなく気にはなってた。  そのうち梨紗子の様子が変なのに気づいた。 「なに、どうした?」 「あのね、村瀬先生に制服のスカートの丈が短いって注意されたんだけどね。その時、座ってるあたしの隣で先生がスカートの裾を捲ったの。こんなんじゃ、なか見えちゃうぞ!って。チラッとスカートの中を覗いてね。  その時、あたしの太ももを指で触られた。もしかしたら、たまたまかもしれないんだけど。  なんか言ったら嫌われちゃうかな、とか、怒って機嫌損ねたら成績悪くつけられちゃうかなって何も言えなかったんだ。」 「なんだよそれ。そんなのおかしいだろ。ただの変態じゃん。」 「でも、ほら、気のせいかもしれないし。それに好きだから。先生のこと。」 「そう言う事じゃないだろ?」 「今度は、もしそう言うことがあったらちゃんと言う。」 「俺が言ってやろうか?」 「いい。ただ誰かに聞いて欲しかっただけ。こんなの、親にも言えないし。   心配かけたくないもん。それにやっぱり好きなの。先生の事。」 「だからって。」 「今度はちゃんと言う。このことは誰にも言わないで?」 「あ、あぁ…。」  なんだよ、それ。いくら好きだからって。  それから数日後の放課後。  梨紗子からメッセージが来た。 『助けて美術準備室』  なんだこれ、どうした?電話したけど繋がらない。  俺は家に帰る途中だったけど急いで引き返して学校に戻ると、誰もいない薄暗い廊下を走り、校舎の一番奥の美術準備室に走り込んだ。 「なんで嫌がるの?俺の事好きなんだよね?」  そんな声が廊下まで聞こえた。  ガラガラ、バシン。  準備室の教室の引戸を勢いよく開け中に入ると背中を向けた村瀬先生がそこにいた。先生が後ろから抱きついてるその腕の中で必死に踠いてる梨紗子の背中がみえた。 「なにやってんだよ!」  気がついたら俺は先生を殴ってた。
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