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恐怖 真夜中のファックス(2分で読める小説
深夜の闇を裂くファックス音。
やっと眠りに就いた私を目覚めさせる。
…こんな夜中に誰なんだ。無視しようか?…
と、思いつつも、緊急の事かも知れないと想い直し
ファックスの元に行く。
届けられたメッセージは、
私の全く知らない女性からだった。
…こんな夜中に間違いファックスか!…
と、怒りが込み上げてきたが、
書いてある内容に目が留まる。
それは、女が自殺を仄めかす内容だった。
…知らない女が、死のうが生きようが俺の知ったことでは無い、無視しろ…
と、冷酷な自分が声をだす。
…今、死ぬかも知れない女性を見殺しにするのか?
そんなに冷酷な男か!助けてやれ…
もう一人の私の声が聞こえる。
私は、散々迷った挙句、無視して寝ることを選んだ。
しばらくの時が過ぎ、またファックスの音。
私は気に懸かりファックスの元に行く。
「ヨシオさん、私を無視するのね、散々私を
弄んだくせに、私など死ねば良いと思っているのね。
死んでやるわ、恨んで死んでやる。
そして化けて出てきてやる。祝ってやる。」
と、書いてある。
最後の文字はおそらく誤字であろう。
「祝い」ではなくて「呪い」だと思う。
「アッシには関わりのねえ事でござんすよ」
と、木枯らし紋次郎の様に僕は無視を続けた。
でもファックスに書かれた事が気になり寝る事ができない。このまま、女が自殺したら、
私が呪われるかも知れない。
私は間違いファックスが届いている事を
相手の女性にファックスした。
…これで安心して眠れる…と、思ったのも束の間、
またファックスの呼び出し音。
ファックスに書かれた事が私に恐怖を与えてくる。
それは、女の父親からだった。
「娘は今首を吊って死にました。貴方のファックスが
もっと早くきていたなら、娘は死ななくて済んだのに
・____・」
と、悔やみの書かれたものだった。
「悪いのは私では無い!
ヨシオと言う男が全て悪いんだ!」
と、書いたコメントをファックスした。
しかし、父親の恨みは消えないのか、
真夜中にファックスが送られて来る。
懸命に無視を続ける私だったが、
心に残る罪悪感は消えなかった。
いつ恨みのファックスが来るか判らない、
と思うと眠れない日々が続いた。
いつしか私は不眠症になっていた。
あれこれ悩みながら、この1か月を過ごした。
ヨシオと言う男、女性から呪われているんだろうか?
一体誰なんだヨシオと言う男は?
と、疑問に想いながらも、また時が過ぎて行く。
そして私は、思いがけない記事を読む!
「今流行りの迷惑ファックスにご注意ください。
深夜の知らない人から流れて来るファックスには要注意です。女性が自殺を仄めかせ、因縁をつけてきます。
関わることなど無く必ず無視をしてください。
間違えても返信ファックスはしないでください。
全国でこの被害を受けてた方は、不眠症に悩んでいます。
全くのガセですので、貴方には責任など一切ありません。」
と、書かれてある。
私も被害者の一人だった。
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