4 狛犬、ブレーン社、痴漢

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「君が本当に仮親にふさわしいか、確かめに来たんだ。真心の力があるっていってもゆがんだ真心かもしれない。だから一日ついていくつもりだ。いっとくけどこれは僕の私的な確認だから、そう緊張しなくてもいいよ。まああまりにもひどかったら報告するかもね」 「そ、そうですか……でも」俺はドン引きをうまいこと隠した。それから話を変えた。 「この犬耳は目立ちすぎません? ほら、コスプレとか……」 「じゃあ、これならどう?」  そういったとたん梓さんの体が光につつまれ、俺は思わず目を覆った。  光が消え目から手を放すと、目の前に梓さんはいなかった。その代わりあったのは梓さんを三頭身にしたイラストがプラスチックのプレートに描かれたキーホルダー……「気」でも使ったのだろうか。  キーホルダーは床から50センチほど浮き上がり、口の部分のイラストをパクパク変えて言った。 「これなら大丈夫でしょ?」 「た、確かに大丈夫だけど……面接官にオタクだって思われたらやだな」 「なら、こうするから」  キーホルダーとなった梓さんはスーツの胸ポケットにもぐりこんだ。 「これならばれないと思うけど。面接試験に手荷物チェックはないだろうし」 「そ、それならいいか……あっ」俺は卵のことを思い出した。 「卵はどうすればいいんですか? おいていくのは心配です」 「基本的に君は卵から目を離さないでほしいんだ。だから今回も持っていってね」 「で、でも……」スーツにぼろぼろのリュックはちょっと変だ。 「君が留守の時に孵ったらどうするの?」 「た、確かに……でも、面接中に鞄の中で孵ったら、それこそ大騒ぎになりません?」 「大丈夫。動けないときには孵ることはないから」 「そ、そうなんですか……」  ここは梓さんの話を信用するしかない。俺は卵を昨日のぼろリュックに詰めた。 「さ、いこ」 「わ、わかりました」  俺はリュックを背負い鞄片手に、駅へと向かった。
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