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ブレーン社の面接会場は、あまり遠くない。千葉→東京の直行線で東京まで移動し、地下鉄に一回乗ればすぐにつく。
直行線に乗っている間は、満員電車で押しつぶされそうになったぐらいで、特に事件はなかった。
事件は、地下鉄(やはり満員だ)に乗っていた時に起こった。
「ねえ拓海君、あれ痴漢じゃない?」
梓さんは胸ポケットから顔を出していた。
胸ポケットからの目線を追うと、俺と同じぐらいの年頃の女性が、通勤カバンを片手に乗り降りするドアのそばでスマホを見ている。
そこまでなら特に問題はないのだが、そのそばにはスーツにハゲのおっさんがいて、女性のミニスカートに手を伸ばしているのだ。めくったら完全に痴漢である。しかも顔がニヤついている……もう確信犯じゃないか。
女性はスマホに夢中なのか、全く気づく素振りがない。
これは声をかけたほうがいいのか……? いや、それで騒ぎになったら困るし……言っても言わなくても騒ぎになると思うけど……でも当事者になったら事情聴取とかありそうだな……このチャンスを逃したらもうブレーン社の内定はもらえないだろうし……
そんなことを考えているうちにも、おっさんの手はゆっくりゆっくりミニスカートへと近づいていく。どうやらミニスカートへ手を近づけること自体を楽しんでいるようだ。俺は痴漢を目撃したのはこれが初めてだが、かなりの常習犯に見える。
おっさんが女性のミニスカートに触れた。それからめくろうとした、その時……俺の体は勝手に動いていた。
「や、やめろーーっ!!!」
俺は人々の中をかき分けて女性の近くへと移動する。彼女はスマホから顔を上げた。
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