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「うわっ」俺は目を覆う。
目を開けると、梓さんは人間の姿に戻っていた。
「こうしないと移動術式がうまくいかないから……まあ「変化・常」に「移動」という高度な式を組み合わせてるせいだと思うけど」
さっぱり理解できないが、とにかく「キーホルダーの姿では移動術式が使えない」ということだけはわかった。
「まあとにかく、移動術式を使ってくださいよ……誰かに見られる前に」
「わかったよ」
そういうと床に八角形の形をした白い魔法陣が現れる。
そして魔法陣の光は俺と梓さんを包み、俺はゆっくりと落下していった……
▽ △ ▽
光が明けると、そこは俺がこの前仕事を引き受けた高楼の前だった。
「ほら、着いたよ」
「……どうしてラーメン屋の前じゃないんですか」
「君に妖怪街の景色を見せたかったんだ……ほら、きれいでしょ?」
梓さんは階段の下に広がる景色を見る。
この前の夕暮れの景色よりは劣るが、たしかに美しい城下町の景色がそこにはあった。これが梓さんの言う「妖怪街」なのだろう。だが、俺の空腹はもう限界だった。
「……たしかに綺麗ですけど、もうそろそろあなたの言う「おすすめのラーメン屋」に連れてってくださいよ」
「わかったよ……じゃ、ついてって」
そういうと梓さんは俺を置いて階段を下りていく。ほんと、変わった人だ……
まあ、ついていくか。
▽ △ ▽
梓さんは下のほうで待っていた。空腹が限界だから、階段を下りるだけでもかなりつらい。
階段の下には立派な門があった(上からだと死角になっていたようだ)。だが、鍵のようなものは見当たらない。
どうやって開けるんだろうと思っていると、梓さんが門に手をかざした。
ガガガガガ~。
音を立てて門が開く。どうやら生体認証のようなものがあるらしい。
「早くいかないと閉まるよ」
すでに門は少しずつ閉まり始めている。俺は急いで通り抜けた。
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