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門の向こうは時代劇でみる宿場町のような光景が広がっていた。通行人たちもみんな着物姿である。
(スーツ姿は目立つな……声かけられませんように)
俺は心の中でそう祈ったが、祈りは届かず、10歩も歩かないうちに声をかけられた。
「あらあなた、その服、どこで手に入れたの?」
声をかけたのは着物姿の女性だった。首が普通の人の2倍はある。ろくろ首、というやつだろうか? まあとにかく、俺が四神の仮親だとバレることだけは避けたい……
そう思案しているうちにも、女性は続けた。
「……もしかして、外の世界の人?」
ああ、最悪の質問きた……
「はい」と言ったら女性特有の長話に付き合わされそうだし、「違います」と言ってもそれはそれでこのスーツ姿をどうやって弁解したらいいのか見当もつかない。
どうしよう――と頭の中がパニックになりかけた時、梓さんが俺の肩をぽんと叩いて、爆弾発言(少なくとも俺にとっては)を放った。
「うん、拓海くんは四神の仮親だよ。一昨日就任したばかりの新人さ」
おいおいおい――! なんでそんなこというんだ――っ!
「ええっ……」
俺が困惑の声を上げているの気にせず、ろくろ首の女性は黄色い声を上げた。
「え、そうなの!? ああ、帰ったらみんなに自慢しなきゃ!」
「え、みんな俺が四神の仮親だって知ってるんです?」俺は梓さんに聞く。
「まあ妖里新聞の一面になったからね。まあ写真は乗ってないから、見てすぐわかるというわけではないけど」
梓さんは小声で言った。その間にもろくろ首の女性は俺に聞く。
「卵はもう孵ったんです?」
「いや、まだです……まだこのリュックの中に入っています」
「じゃあ、見せてくれません?」
「いいけど」梓さんが割って入った。
「見るだけでお願いね」
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