6 ラーメン屋、一反木綿、結界

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「……どうやって食べるんだ、これ」 「簡単でっせ、歯でかみ切るんっすよ」 「で、でも、「めんをかみ切ったり、すすったりしてはいけない」って、母さんが――」 「そんなこと気にしなくていいっす。俺も最初はこだわってたんですけど、客が来ないのでやめました」  俺はめんを口に放り込み、歯でかみ切った。  コシがあるがかむとぷっつりとキレ、スープともよく絡んでいる……めんが長いのをのぞけば、完璧といっても過言ではないようなうまさだ。 「お、おいし~!」  俺は口を閉じたまま感嘆の声を漏らした。  そして一口目を飲み込んでから、錦さんに向かって言った。 「めちゃくちゃおいしいですね!」それから、俺はある疑問をぶつけた。 「――どうしてこんなに長いんですか?」  それは本当に純粋な疑問だった。  ラーメン屋は慈善事業ではないから、売れなければ意味がない。  長いめんを嫌って来ない人もいるのでは、と俺は思ったわけだ。  少し考えたそぶりを見せてから、錦さんは言った。   「――ほかの店との差別化っす。ここが妖怪街唯一の塩ラーメン屋というわけではないから、ほかの店との競合も避けるためにやっているんす。あと、一反木綿って、一反っていうんだからすっごく体が長いんす。だからそれもイメージしました」  ほかの店との差別化なら「めちゃくちゃ長い塩ラーメン」よりももっといい案がありそうなのに――俺はそう思った。   「ていうか、このめんって何センチあるんですか?」 「一メートル半っす。実をいうと一反は12メートルぐらいなんすけど、そんなに長いめんはつくれませんっす」  俺は二口目を口に入れてかみ切った。  その間に、俺の中にもう一つ疑問が浮かんだ。 「ていうか、梓さん――」俺は二口目を飲み込んで言った。 「――結界を無視できる移動術式があるなら、結界の意味ってあるんですか?」
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