6 ラーメン屋、一反木綿、結界

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 これもうすうす思っていた疑問だった。  結界を無視できる移動術式があるなら、今頃東京は妖怪であふれているはずだ。  気づかないように気を付けているとしても、それなら今の妖怪の里にはもうちょっと現代の文化が入っているはずである。  木造の建物が通りを挟み、着物を着た妖怪たちがその通りを歩いている――なんていう状況は、まずありえないのである。 「――結界を無視できる移動術式は、四神の力を借りないと無理なんす」錦さんが悲しそうな口調で答えた。 「俺も移動術式は使えるんすけど、結界を超えることはできません」  なるほど。梓さんは四神の力を借りているのか。  そう思っているうちに、錦さんはまた元気な口調に戻っていた。 「ああ、早く食べないと伸びちゃうっすよ! めんを残すのは禁物っすからね!」 「あ、わかりました」  俺は少し急いでラーメンを食べ、5分強ほどで食べ終わった。
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