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「はい、もしもし」俺はスマホを耳元に当てた。
「あ、おはようございます」かしこまった女性の声だった。
「――山崎さんの携帯でよろしかったでしょうか? 私、株式会社エンドレスブレーン社人事部の、西川ゆかりと申します」
株式会社エンドレスブレーンといったら、昨日面接に行きそこなった「ブレーン社」じゃないか。
ライバルだってたくさんいる、行きそこなったらそこで不採用のはずだが……?
そう思っているうちにも、西川さんはつづけた。
「――実は昨日、堀越恵里菜という方が面接にいらっしゃいまして」
堀越恵里菜。もしかして、昨日痴漢にあってたあの人か――?
俺が唖然としている間も、西川さんはつづけた。
「――「山崎拓海」という方が痴漢を止めてくれた、とおっしゃっていたんです」
堀越さんは、ブレーン社の面接に行ったのか。
なら、俺もちゃんと電話すればよかった――そう悔やんでいるうちにも、西川さんはつづけた。
「それでですね、弊社としては、後日改めて面接をしたいと思っておりまして――でも、この面接は儀礼的なものですので、実質的にはもうほぼ内定だと思ってくれれば大丈夫です」
「――え、え、ほんとですか!?」
俺がスマホに向かってそう叫んだとき。
卵が普段の何倍にも明るく輝きだし、ひとりでにバスケットの外へと転がり落ちた。
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