10人が本棚に入れています
本棚に追加
1 神社、謎の美女、面接
「神様! どうか正社員にしてください! 母さんを安心させたいんです! 千葉県神が丘市犬神◯丁目◯ー◯ー◯、大川キャッスル203号室の山崎拓海です! どうかよろしくお願いいたします!」
俺は手をパンパンと叩くと頭をしっかり下げた。ブラックじゃなきゃどこでもいいですとにかく正社員の肩書がほしいんです!
面接に行った会社が43になった。今日も面接に行ったが、手応えはなかった。面接官は俺の履歴書をみながらあくびをしていた。あれは多分ダメだ。
2月の冷たい風に背中を冷やしながら、一人でトボトボ家路を急いでいた時、たまたま覗き込んだ路地に鳥居が見えたので、ついつい引き寄せられてしまったのだ。
「しっかし、この神社、よくもここまで生き残ってたな」
一般人の俺にそう言わせるほど、その神社は寂れていた。鳥居は傾き、両脇にいるお使いはもうなんの動物かわからないほどすり減って、お堂の塗装なんてほとんど剥げていた。
それでも、神社であることは確かだ。もしかしたら祈りに来る人が少ない分、願いを聞いてくれる確率も上がるかもしれない。もっとも、もうこの神社に神様はいないと思うが……
「おっと、賽銭入れないと……」
俺は賽銭を入れてないのに気づいてカバンから財布を取り出したが、そこで賽銭箱に大きな穴が空いていることに気づいた。これにお金をいれるのは小銭とはいえ抵抗があるな……
仕方がない。今日は鈴を鳴らすだけにしておこう。俺は鈴をふるための紐(真っ黒によごれていた)に手をかけ、引っ張った……
ブチッ。
よっぽど古い紐だったのだろう。俺が引っ張ったのをきっかけに、3つある鈴ごと落ちてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!