第三章:星影の愛

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 たくさんの愛を別れをユエは受け止めた。それはかけがえのない思い出であり、大切な宝物だ。  別れを経て、幾年月を越えて、再び地上へと降り立った。悲しくはない、だってみんなは見守ってくれているのだ。ワルドも、みんなも言っていたのだから悲しくはないと。  そう、悲しくはない。でも、やはり彼らがみんながいないのは寂しかった。もう一人しか一族はいないという現実が嫌だった。  それでも彼らの想いを捨てることはできなかった。彼らの望みは星影の歌姫が生きて幸せになることだから。 「何で、なんで泣かないの?」  ルゥルゥは涙を零す、貴女は今だって寂しいと思っているのにどうして泣かないのだと。そう問われてユエは目を細めながらゆっくりと瞬きをした。 「たくさん、泣いたわ」  みんなと、ワルドと別れる時、常夜の淵で一人いる時、何度も泣いた。悲しくて、寂しくて涙が溢れた。  そうやって泣いて気づいた、こんなにもたくさんの想いを貰っていたのだと。だから、地上に出た時はみんなを心配させないように泣くのはやめよう、笑顔でいようとそう決めた。 「それにね、今は悲しくないの」  ユエは両手を広げて「みんながいないことは寂しいと思うわ。でもね、今は悲しくはない。だって、一人ではないのだもの」と微笑む。 「カマルがいるの。傍にいるのよ」  悲しくても、傍にいてくれる存在がいる。一人ではないのだ、涙を流すこともないのだとはっきりユエは言葉を紡いでいく。  ふわりと風が吹き抜けて、花弁が散るとユエを彩るように舞った。 「今度は私の番なの。みんなと同じようにたくさんの想いを届けてね、そして守るの」  たくさんの愛をもって守るのだと、星の瞬きのような真っ青な瞳がカマルを優しく見つめる。
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