旭街は沙汰の外ー混沌とした街で店主は凶器を手に笑う

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「ごめん」 白蓮は素直に謝った。怒気をまとった灰を前にしても、青年の表情は柔らかい笑みを浮かべている。 「どうにかしてポロっとこぼさないかなって思ったら、口から出ちゃった」 「お前がこぼすな」 灰は大きくため息をついてみせた。 「お前じゃなかったら頭カチ割って商材にしてた」 「友達で良かった」 白蓮は懐から封筒を取り出した。膨らんだ封筒を受け取った灰は、なかに入っている紙幣を数えると自身の懐に仕舞う。 「それと、こっちはうちのボスから」 黒檀の机に並べられたのは、そこらの店には置かれていない高級煙草だった。 灰は目を輝かせ、ご機嫌に声を弾ませる。 「うわー、ありがてぇ! 親父さんによろしく伝えといてくれ」 さっそく一箱封を切り、取り出した煙草を咥えた。白蓮が机に置いてあったライターに火をつける。友人から火をもらい、煙をふぅと吐き出した。 広がっていく紫煙はほのかに甘い香りがする。 「やっぱり、さっき渋った情報売っちゃおうっかなー」 にやにやと笑いながら白蓮を見下ろすと、相手は鼻を鳴らして呆れたように笑う。 「そんな気ないくせに。なにかの意趣返しのつもりか?」 紫煙と煙草の香りが広がっていく。白蓮は机の灰皿を灰のそばに引き寄せた。 「きみはきっと拷問を受けたって一言も吐かないよ。自分の矜持(きょうじ)に反すればその途端、自分自身に失望して自殺する。お気に入りの煙草を貰ったぐらいじゃ売ってこないだろ」 「そんなご立派な人間じゃねぇよ」 「我が強いとは言ったが立派とは言っていない」 「クソが」 悪態とともに煙を吐き出す。灰皿に灰を落としながら、言葉を続けた。
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