旭街は沙汰の外ー混沌とした街で店主は凶器を手に笑う

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「自分の命が一番大事だ。殺されるぐらいならとっととゲロする。ヘドロから生まれたような根っからの腐ったクソ野郎なんでね」 「この街で生まれ育った人間は皆そう。私もそう。有象無象もれなく腐り散らかしている」 「じゃあべつに俺は普通か」 「でも、きみは他より頭一つ分背が高いからその分余計にクソかも知れない」 「根に持ってんな。さっき身長いじったこと」 店の前の通りからは行きかう人々の話声や、バイクや車の走行音が聞こえてくる。 走ってきた車が店先で停車した。 灰と白蓮は会話を止めて耳を澄ませる。車のエンジンはかかったままで、降りて来たのは複数人だと物音から推測する。連なった足音が店に向かって近づいてくる。 扉が乱暴に蹴り開けられた。ドアベルが警報のように激しく鳴った。 乗り込んできたのは五人の男たちだった。横柄な足取りで店内に入って来ると、開け放った扉の前に広がった。 男たちは灰と白蓮に向かってサブマシンガンを構えた。 一斉にトリガーが引かれる。 けたたましい銃声があたりを呑み込んだ。 乱射された銃弾がカウンターや壁を抉る。天井から吊り下がるランタンが横薙ぎに撃ち落され、戸棚のガラス戸や瓶を粉砕していく。 鉢植えが割れて観葉植物が倒れ込む。家具やランタンの残骸が散乱した床に、さらに土が散らばった。 それらの物音をすべて押し流す銃声。 店内に充満する硝煙と土煙。脳が痺れるような火薬の匂い。 数と火力による一方的な暴力。広範囲への執拗な掃射。 容赦のない攻撃を受けて、店は無残な惨状となっていた。
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