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雨の日のあの子
今日は雨だったから、私は学校から帰った後もずっと施設にいた。
小さいけど体育館みたいなところがあるから、みんなでドッヂボールをしたけど、私はボールが怖いからいつも外野に逃げちゃう。
最後は大体、五年生とか六年生の男子が、すごい速いボール投げて、たまに顔に当たった子が「顔面セーフ」って言いながら泣いてる時がある。
あれ、痛そうだな。なんで泣いてるのにまだやるんだろう。
結局、その泣いてる子が泣きながら六年生に当てて、外野にいるだけの私は「勝ち」になった。
「大丈夫?」
「別に、ひっく、いたくねえし、っく、ひっく」
「先生にみてもらう? 目が赤いよ?」
「なんでも、ねえよ。い、いたく、ひっく、ねえし」
鼻血は出てないし本当に平気なのかな? と思ってたら、真っ赤な目のその子を見つけた先生が大騒ぎしてた。
先生たちが「間に合う?」「あそこは六時半までやってる」とか言いながら、慌てて病院に行く準備してた。なんでもなくないじゃん。
今は四時五十五分。そろそろ外に行ってた子が戻る時間。
雨でも学校のお友達の家に行ったりする子はいるから、その子たちが戻って来る。
ばたばたと先生とさっきの目が赤い子が出て行く中、五時ギリギリでお友達が帰って来た。
「ただいまー!」
「おかえり。うわ、濡れたね。傘どうしたの?」
「何もしてないのに壊れた!」
「何もしないで壊れるわけないでしょ。今日は風はないんだから。さてはまたひっくり返して遊んだな?」
「うひひ」
六年生の男子がふざけたこと言いながら上がると、小森先生はお尻をぶつ真似をしてた。男子はゲラゲラ笑いながら自分の部屋に行っちゃった。
それからあと二人、五年生と六年生の姉妹が帰って来て、先生はドアを閉めようとした。
「ただいま」
「ここはあなたの家じゃないの!」
またあの子、先生に怒られてる。
こんな雨の日、先生も少しくらい話を聞いてあげればいいのに。
女の子は黄色い傘をさしてるけど、私だったら暗い雨の中で外に出されたら怖くてしょうがないよ。
先生はすぐドアを閉めて、鍵もした。
「ねえ、先生」
「なに、麻衣子さん?」
「あの子、どうして入れてあげないの?」
私はずっと思ってたことを思い切って聞いてみた。
でも、これで先生にいじわるされるのが私になったらどうしよう。
でもでも、あの子もずっと可哀相だし。
「あの子? ごめん、誰のこと?」
「え? あの、いつも帰ってくる……今もここに……あれ、いない」
「今日の外出は三人だけだよ。ちゃんともうみんな帰って来たよ。ああ、もうほら見て。また傘壊しちゃった。あーでもこれは直りそうよ。先生おちょこ直しのプロだからね」
さっきびしょ濡れで帰って来た子の傘だ。骨が変なふうになってる。
先生は濡れた傘を持って、「ほら、宿題やって来な」って言った。
けど今日はもう終わってる。
私は部屋に戻って、窓から外を見ることにした。
あの三つ編みの子がどこかで困ってないかなって思ったけど、道路に車が通るだけで人は誰もいなかった。
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