風邪をひいた日の話

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風邪をひいた日の話

 あれから私は、先生が新しく買ってくれたボードゲームに友達と夢中になって、五時の帰宅時間のことは忘れてしまった。  このゲームすごく楽しくて、三年生の私でも六年生の人に勝てることあるのが嬉しい。  オセロとかトランプとかウノとか、あと絵柄を合わせて何かするゲームって、私いつも負けちゃうから。  一番おいしいハンバーガーを作るゲームだけど、手札を覚えていたりしなくても、数を数えたりしなくても、色で見ればいいから分かりやすいの。  今日の私は「ベーコンレタストリプルチーズトマトビーフパテBBQソース」で勝ったよ!  そんなことが三日続いたら、五時のあの子のことはもう一週間以上忘れてた。  しかも、最悪なことに風邪ひいちゃったから。  もうすぐ学校で劇の発表があるから、練習したかったのに。  ウサギのセリフ、ちょっとだけ長いから私は大変。でも頑張りたいんだ。ウサギ好きだから。  一日目は熱が高くて、先生が病院連れてってくれた。  二日目もまだ下がらなくて、薬を頑張って飲んで、病気のお部屋でずっと寝てた。  先生が何度も来てくれて、特別にDVD見せてくれた。  私がウサギが好きなの知ってるから、ウサギの警察官が主人公のお話だった。  すぐ眠くなっちゃうから、みんなが帰って来るまで起きるたびに続きを見せてもらって、三時頃にやっと見終わった。熱は大変だけど、お話は面白かったな。  三日目、少し熱が下がって、私は退屈な気分になった。  まだ学校にも行けないし、施設のお友達ともお話しできない。  お部屋でごろごろ、時々漢字の分からない漫画を眺めてた。  お昼ご飯の後、少し眠くてウトウトしてたら、知らない人の声がたくさん聞こえて、私はこっそり部屋から出て廊下を覗いてみた。  なんか、神社の人みたいな着物着た男の人と、女の人がいた。  先生たちも並んで、みんな壁側で俯いてる。  神社によくある、ロープみたいなやつとか、何かとんがった葉っぱとか、白い紙のついた棒とか、あとお酒の瓶みたいのも見えた。  何してるんだろう。  私はそのまま、じーっと観察したけど、着物の人が言ってることは日本語なのに日本語じゃないみたいで、何してるか何も分からなかった。  でもなんか、先生たちみんな、すごく真面目な顔してる。  後で聞いてみたかったけど、聞いたら怒られるかな? お母さんみたいに、「子供のくせに余計なことを言うな!」って怒るかな?  気になるけど、やめとこう。
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