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すると男色インテリ従者が90度横を向いたまま問う。
「それで……あなは一体何をしたのですか? 正直に白状したほうが賢明ですよ?」
誰に向かって話してるんだかわからないシュールな絵面で真面目に問われて拍子抜けしそうだが……
何をしたかと問われれば、それは――
「ゆ……許されない密会を……したわ」
思い出すだけで涙が溢れ出しそうだが、地獄の番人には逆らえない。
「ほぉ。それで、何の取り引きをしていたのですか?」
「取り引き?」
「密会してたのでしょう?」
シェリルは唇を噛み締めて思う。
取り引き。取り引きか……。大人はそういう言い方もするということなのだろうか。言うならば、元婚約者と秘密の取り引きをしていたということになる。誰にも言えない秘密の取り引きだったが、地獄に落ちてまで隠しても仕方がない。そう思って正直に白状することにした。
「そ、そうね、してたわ。でも許されないってわかってるの。国の宝を自分勝手に奪うなんて……そうよね、ダメなことよね。ごめんなさい……。だから……っ、諦めるって決めたのに……それなのに攫われて、襲われそうになって……なんとか逃げたのに、足を踏み外したの……ッ……」
「なるほど、あなたは国宝に狙いを定め、諦めようとしたものの諦めきれずに、結局盗みを働いた。しかし仲間割れした挙句に、道理から外れるような行為をした、と?」
男色インテリ従者にそう言われて、ちょっと疑問で首を傾げる。
「仲間割れ……? よくわからないけれど……そうね、でも彼の心を盗んだところで何の意味もなかったのよ……」
「彼の心……? いまいち話が見えませんね……」
すると変態グッドルッキング魔王がハァッと呆れ顔で息を吐き出して男色インテリ従者に告げる。
「おい、この人は潜りではない」
「は? なぜそう言い切れるのです?」
「俺の勘」
……モグリって何かしら? と思うシェリルを置いていくように、従者と魔王は――
「勘って何ですか。そんないい加減な」
「結構当たるだろ」
「そんなもので決められては困りますよ。示しが付かない」
「俺が責任を取るからいい」
「あなたが責任を取ったらここのボスがいなくなるでしょうが」
「どうして外れるのが前提なんだよ」
……とか何とか非紳士’sはごちゃごちゃと小競り合いをしているのだった。
(……ねぇ、モグリって何なのってば?)
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