01. 地獄?

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シェリルが目をパチクリさせて話の行方を探っていると、従者が咳払いをして横向きのまま再びシェリルに問う。 「それで……あなは一体何をしたのですか? 正直に白状したほうが賢明ですよ?」 なぜ話が最初に戻ったのだろう。従者は何でもない素振りで聞いてるけど……あなたたち、ちょっとおかしいわよ? と、その意味不明さにシェリルは顔を引きつらせた。 「ついさっき正直に白状したのに……」 「ちょっと誤解がありました。ですから改めて話してください」 「そんな……」 地獄というのはやはり酷い場所らしい。思い出しただけで涙が溢れそうな話を繰り返しさせるだなんて、ずいぶん辛い罰だ。 今にも泣き出しそうになって黙っていると、従者がしびれを切らしたように話し始めた。 「一度話を整理しましょう。ここはエーデルアルヴィア王国内にある辺境の地・ベリタスです」 「……えっ!? エーデルアルヴィア王国!?」 エーデルアルヴィアといえば、シェリルの住むルミナリア王国の隣国。その国土面積はルミナリアの3倍以上、人口も5倍以上の大国で、もちろん地獄でもなく魔王がいる世界でもなく、生きてる人々が暮らす国だ。 「嘘……私、崖から落ちたのに生きてるの!?」 「……は? あなた、崖を落ちてきたんですか?」 「うん、そう。私生きてるのね……」 暗くて下が見えないくらいの切り立った崖。そこから落ちたはずなのに……。 「本当にあの崖から落ちたんですか? 上から?」 「そう……だと思うけど、必死だったし、途中から記憶がないの。でもてっきり地獄かと思ってたわ。違うのね」 「地獄? あなたはずいぶん不思議なことをおっしゃいますね。私たちが一体何に見えていたのでしょう……」 「えっ? それは……変態グッドルッキング魔王と……男色インテリ従者? 二人合わせて非紳士’s、みたいな感じ?」 正直にそう答えると、従者の顔はみるみるうちに赤色に染まる。 「……は? 何ですかそれは……。この際、魔王とか従者とかグッドルッキングとかはいいとして、変態とか、なっ、男色とはどういう意味ですか……?」 「だって、恥ずかしいって言ってるのに胸を隠させてもくれなくて、『女の武器なんて通用しない』とか言うから……。それに、そっちの魔王は私の胸元をじっと見てたわ」 すると非紳士’sは―― 「あなたという人は……じっとなんて見てたんですか!?」 「だ、断じて違う! それにそういう意味で見たわけではなくてだな……」 「せめて相手を選んで見てくださいよ」 「何だそれ。選べば見ていいのか?」 「……まぁ、そういう時は、一応お相手に一言添えて――」 「『見ていいか』って聞くものなのか?」 「……」 「お前男色なんだな。知らなかった」 「違いますよ! れっきとした女好きです!」 「……堂々と言うことじゃないな」 「そっ、そういう意味ではなくて!」 ……とか何とか非紳士’sは再びごちゃごちゃと小競り合いをしているのだった。 (……ねぇ、あなたたち仲良しね。暇だわ……)
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