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「友達とか家族の愛じゃだめなんだよ。結婚するくらい好きな人じゃなきゃ。レオのことももちろん愛しているけど、夫に対する愛と子どもに対する愛は別物じゃん? だから私じゃダメ。でもあんな邪道な魔法なんてピーターしか考えつかないだろうし、心配する必要はないと思うけど」
リサはそう言ってお茶をすすった。
その言い方では、まるで私とシュヴァリエが愛し合っているみたいだわ。
エドワードが意を決した表情でおもむろに聞いてきた。
「エマ様はレオと婚約なさったのですか?」
「してないわよ!」エドワードまで!
「では、これから婚約されるのですか?」
なぜそうなるのよ! 私が呆れ顔で答えようとしたとき、リサが割って入った。
「エドワード、落ち着いて。エマだっていつか結婚するんだから、知らない紳士よりもレオの方が嬉しいじゃん」
エドワードはリサの方をじっと見たあと、何も言わずにキッチンの方へ向かった。
それを目で追っていたリサが、私に視線を戻して苦笑する。
「ごめんね。父親みたいに思っているみたい」
「私もエドワードを父のように慕っています」
「そうなの? それは嬉しいねえ」驚いた後にこにことした笑みになった。
シュヴァリエはソファにもたれたまま、考え込んだ様子でやりとりを眺めている。
「どうしたの?」
私が聞いても、シュヴァリエは気のない目を合わせただけだった。
「いえ別に」
シュヴァリエは立ち上がり、階段を上がっていった。
「エマはお母さんのいるウェーデンへ行くと言っていたけど、ランスに戻ってくるの?」
リサに聞かれたので答えた。
「いえ、またウェーデンへ行きます」
「レオもついていくの?」
「シュヴァリエは、ランス軍に所属しているので」
「じゃあ離れ離れだね。うちもだけど寂しいよね」
「そのことなんですが、私が孤児院のお金を出しますから、エドワードには執事を辞めてもらって、孤児院に戻られたらどうかと思っているのですが」
「えっ? そんなの悪いよ」
「ても、父がタリアへ行ってしまったので、ここへ戻る頻度は減ってしまったのではないですか?」
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