40. 騎士も誰も敵わない公爵令嬢の命令は絶対よ

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「なんにせよ手があることは羨ましい」  羨ましい? 「どういうことですか?」 「僕は惚れた相手と結婚できませんから」  ああ、そっか。相手が王太子殿下でも、いやだからこそできない話だものね。 「それに比べれば貴賤結婚など、僕にとっては大したことではありませんが、少佐からしてみれば請う方であるのに自分のために身分を落として欲しいなどと申し上げられないのでしょう」  えっ? 貴賤結婚? そうか。孤児で爵位のない軍人、しかも元使用人だものね。そうか。 「ですがタリアの公爵令嬢はシュヴァリエと結婚しようとしておりました」  ミス・マリアンは確か、『私と結婚する資格は十分にあるわ』と言っていたわ。 「タリアはランスと違いますから」  そうなんだ…… 「ミス・ヴァロワのお考えは?」  えっ? 「いくら殿下でも、現状は少佐が爵位をいただくのは難しいと思いますから、そうなるとせめて少将にまで上り詰めないといけません。となると長くて10年はかかるかと……少佐の才をもってしても5年では無理でしょうね」  10年……その間ランスにいて軍人として励まなければならないわけか。そっか……  と言っても、私はそれを止めに来たんだわ。シュヴァリエに爵位なんて必要ない。爵位なんて得たら貴族令嬢と結婚できるってことでしょう? 素敵な令嬢をよりどりみどり選べるってことだわ。  シュヴァリエは陰気な表情をするけど端正な顔立ちではあるし、背は私と同じくらいだけどスマートだし、口は悪いけど優しいし、態度は最低だけど身を呈して守ってくれるし、きっと評判になるわ。いえ、今回の武勲が既に噂に上っているかもしれない。軍の中ではすでに評判の的なんだもの。すぐに社交界でも知られるわ。爵位なんて得たらミス・マリアンのような令嬢がこぞって…… 「ミス・ヴァロワ? 殿下が参りましたよ」  えっ? あっ!
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