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「私と離れたからって何なのよ? たまには会いに来るわよ。エドワードたちのところにも遊びに来るし」
シュヴァリエはため息をついた。
「そうですね。そうでしたね」
いきなり不貞腐れたように顔を背けた。
「なによ?」何が不満なの?
「僕はエマ様にとってエドワードやフランソワ様と同じでしたね。そうでした。僕なんかが求婚したところで叶うはずはありません」
いきなりどうしたの?
「エマ様にはもっと素敵な紳士が相応しいです。出過ぎた考えを持ってしまいました」
「出過ぎた考えって何よ? 求婚のこと? 私が誰からも見初められないって落ち込んでいたから同情しただけでしょう? 爵位を得ればあんたはもっといい令嬢と結婚できるわよ。名ばかりでも傷物でもない本当の公爵令嬢と」
「ご自分を貶めないでください! 二度と傷物だなどとご自身を評価しないでください!」
シュヴァリエが立ち上がらんばかりに怒りに満ちた声を上げた。
「それに他の令嬢とは誰ですか? 僕はエマ様をお慕いしていると何度も申し上げております。エマ様以外のご令嬢などどうでもいい。ご令嬢どころかエマ様以外の人間全てどうでもいいです。同情だなんて、エマ様が僕に向けることはあっても、僕がエマ様にそのような感情を持つことはありません!」
いきなりどうしたのよ?
「忠誠心はありがたいけど……」
「忠誠心って何ですか? 騎士が主人に向けるものですか? 僕はエドがエマ様に向けるような気持ちでお慕いしているわけではありません。エドがリサに向けるような愛でお慕いしているんです」
それってつまり、夫婦の愛ってこと?
「あんた、私のこと英雄として尊敬しているんじゃないの?」
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