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ノブを回す動作も手間で体当たりでドアを開け、私は車外へ飛び出した。
すぐさま臨戦態勢を取る。携帯している短刀は車中で既に引き抜いていた。
ランプの明かりが届く範囲は極わずかで、辺り一面は闇に包まれているが、瞬く間にきらめいた剣先は見逃さなかった。
足音に耳を済ませて距離を測り、その剣先の柄のあたりを短刀で切り裂く。
うめき声と共に後ずさる音。私はさらに二歩踏み込んで、相手の急所あたりをめいいっぱい拳で叩いた。
「そうです。お嬢様は力の使い方がお上手です。紳士を相手にしても負けないでしょう」
エドワードのその言葉は正しかった。相手は一撃で地面に倒れ伏した。
まだ仲間はいる。
私は気を抜かずにすぐにその場を離れ、呼吸を鎮めて耳を澄ませた。
微かに枝を踏む音が聞こえ、それと同時に音のする方へ短刀を投げる。
うめき声と倒れる音。
あっ! 後ろから首を絞められた。私は背後に向かって思いっきり肘鉄を食らわせる。
全然だめだ。どうしたらいい?
足を振り上げ、後ろに向かって力いっぱい蹴りつけるが、かするだけで当たらない。
そして頬に冷たい感触が……
短刀だ。
「令嬢か? お転婆なお嬢様だ。おい、名を言え。お前の親に金を出させる」
私は答えない。
「ふん。黙っていられるのも今のうちだ」
男は私の頬に短刀を滑らせる。熱い。
冷たい刃先が触れた後に頬を液体がつたう。
「頭、中に男がいますぜ」
「ふん。女に戦わせて男はビビっているのか? 誰だ?」
「こいつはコンティの息子でしょう。見たことあります。ひ弱な坊っちゃんですよ」
「コンティか。あそこは貧乏貴族だ。仲間の金貸しも苦労している。……ということは……」
「ランスから来たという金持ちの娘じゃないですかね?」
こんな野盗が私のことを知っているとは……
「それはいい。生かしておくか」
「かなり金をせしめられますぜ」
「ああ」
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