齧る、貪る、愛してる。

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 いや、本当は何度もこのページに目を通している。呪われたように繰り返し中毒のように夢中だ。いつ見ても期待してしまう。  思わず乾いた喉を鳴らす。この世界から音が消え、その文章しか目には映らない。  どうせ何をやっても助からない。でも、そこに一筋の希望があるのならば試してみる価値がある?   *  深夜の病院は恐ろしいほどに冷ややかで、僕を拒んでいる様だった。  片手に持ったクーラーボックスは重く、たぷたぷと音を鳴らす。それは空調機から出る風の音によって掻き消され闇へ入り混じる。  張りつめた緊張感の中、焦らずに歩みを進める。決してその姿が見られないように。見回りをしている者はいたが、幸い辺りが暗いおかげで心配はなかった。  彼女のいる病室の前、僕は深呼吸をする。もう寝ているだろうか? もし眠っているのならば都合が良い。  僕を軽蔑するだろうか? まるで夜這いのようにも思えるこの行為にどことなく嫌悪するも、一つの映像が頭の中に流れる。  それは彼女がまだ元気だった頃で、一緒に遊んでいた時の様子。短い黒髪に少年より少年らしく外で体を動かすのが好きだった彼女は天使のように笑っていた。僕は運動音痴だったせいで何をやっても負けてばかり……それなのにお互い楽しそうで微笑ましい。  今は無造作に伸びた黒曜色の髪が時間の経過を感じさせ、消えそうに儚く遠くを見つめている。でも自分の前では何事もないように接してくる。苦しいのも痛いのも我慢しているのは分かっている、それなのに今の彼女と昔の彼女の笑顔が重なると僕の胸はどうしようもなく締め付けられる。  救いたい。ただその一心で希望に縋り光を掴んだ。
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