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* 4年前、真冬は愛する恋人と同居中だった。 家から逃げ出したくて高校を卒業するやいなや軍隊に自主入隊した。 大学に行く余裕がなかったからだ。 軍隊から休暇を取っても家の近くにも行かなかった。 切実に家と縁を切ってしまうことを決心した冬は、除隊後、ソウルで新しい人生を始めた。 ここなら過去の自分を捨てて新しく始められそうだった。 しかし、高卒に過ぎない冬にできることは限定的だった。 知人の紹介でやっと落ち着いたのが京カラオケの従業員だった。 昼夜が変わる生活パターンと人に轢かれて暮らしていた日々の連続だった。 疲れたが、それでも家よりはましだと思って、粘り強く頑張っていた時、偶然に高校の同窓生にそこで会った。 高校2年生の時、班長のハン·ソジュン。 何年も経ったが、冬は一目で分かった。 一時、自分の胸をときめかせた初恋だったから。 そんな奴にゲイカラオケで会ったということに驚くこともあり、嬉しくもあった。 幸い、ソジュンも冬について調べてみた。 ハン·ソジュンは極めて平凡な家に大人たちが喜ぶような端正な容貌を持ったとりわけ勉強ができる子供だった。 全校で一度も1位を逃したことがないほどだった。 それに反して、真冬は両親に関する良くないうわさが相次いで続いた存在感のない貧しい学生だった。 居酒屋でお酒のサービングをする真冬とS大学の大学生であるハン·ソジュン。 どこか似合わなかったが、彼らはあまり気にしなかった。 ただ同じゲイという点、そしてお互いの過去を知っているという点が安らかに感じられた。 そのためだろうか。 それまでまともな恋をしたことがなかった冬は、再会した初恋のハン·ソジュンに心を奪われてしまった。 しかし、自分の境遇に告白は夢にも思わなかった。 そんな冬を先に揺さぶったのはハン·ソジュンだった。 クリスマスを数日残してハン·ソジュンは冬に告白した。 「私、あなた好き、付き合う?」 対人関係が狭い冬よりハン·ソジュンは友達が多かった。 その気になれば、冬よりもっといい男に会えるはずなのに、あいつは冬を選んだのだ。 その年の冬。 冬は生まれて初めてクリスマスが幸せだった。 その日を基点に冬は変わった。 一人で世の中を生きていた冬にハン·ソジュンという太陽ができたのだ。 辛くて逃げたかった一日が幸せで狂いそうだった。 冬は愛するソジュンのためなら何でもしてあげたかった。 お小遣いが足りなくて大変だという言葉に積立金を割ってあげたりもしたし、カードもないかという叱りに生で初めてクレジットカードも作って渡した。 愛する恋人が自分のカードで後輩にご飯を買ってお酒を買ったと自慢するのが内心嬉しかった。 いざ増えるカード代に冬はバス代がなくて歩き回ったのに。 周りからはそんな冬を愚かだと言われたが、当然そうすべきだと思った。 だって、愛してるから。 自分が少し大変で苦労しても、ソジュンが笑うだけでも幸せだった。 そのように数ヶ月間稼いだお金の大部分がハン·ソジュンのカード価格で出ている時だった。 急にソジュンが同棲を提案した。 ほとんどが冬の家で生活していた時だったので、自分の家の家賃がもったいないと言って処分するという。 ギョウルは喜んでソジュンとの同居を受け入れたが、生活費を要求することはできなかった。 あいつは勉強する学生だったし、自分はお金を稼いでいるから。 これさえ当然に自分が耐えなければならないと思った。 代わりにソジュンが卒業して良い職場を探せば、その時は2人のお金を合わせて大きな家に引っ越すことができるだろう。 一人で幸せな未来を夢見たが、そのように始まった同居は幸せではなかった。 ソジュンと顔をぶつけることが手に挙げられ、対話もますます断絶していった。 なぜそうするのかという冬の問いで、ソジュンは勉強が大変だという言葉で大まかにごまかした。 そんな中、キョウルはソジュンに一緒に働いていたキム·ヨンホを紹介することができた。 向こうの向こうの知り合いだったので、軽く考えたのが間違いだった。 クリスマスイブ。 雪が降ったホワイトクリスマスだった。 社長の気まぐれで店を早く閉めてしまった。 久しぶりにデートでもしてみようかという思いで浮かれたギョウルがソジュンに連絡したが、あいつは約束があるという言葉だけを投げたまま冷静に電話を切ってしまった。 そばでその姿を見守っていたチャ·イヨンが舌打ちをしながら神経質になった。 「おい!もう別れろ! 別れて!私が見るには、あいつはヤングじゃないんだって? ほら!クリスマスイブに恋人を捨てて友達に会うやつがどこにいるの?」 「私が早く終わるとは思わなかっただろう」 ギョウルがソジュンの肩を持って困ったように笑うと、イヨンが情けないという視線を投げた。 仕事をして親しくなったチャ·イヨンは、ハン·ソジュンを気に入らなかった。 「他の子たちは恋人いないの?」 みんな待ってから会ったり、お店に来て一緒に遊んでたけど、あいつだけどうしたんだ? 本当にあなたを愛しているの?」 「またそうだ。 ソジュン、忙しいじゃん。 S大学の学生がどれだけ勉強を頑張らなければならないのか」 「ああ、偉い。 あのS大学を一人で通うの? 本当に気に入るところがないんだって。 行こう、行こう。 今日はこの人が奢るから」 「いいよ。家に帰って寝るよ。」 「えへい、あなたされたからって私まで開けたらダメでしょ!」 寂しいお兄さんと一杯やろうって?」 「もういい、いやだって」 「反射」 チャ·イヨンは逃げようとするギョウルを捕まえて頑として連れて行った。 しばらくもがいていた冬は逃げることをあきらめ、チャ·イヨンと肩を並べて歩いた。 「雪が降ればいいみたい、みんな喜んでいるね」 「君は好きじゃないの?」 「別に、歩くときに不便だよ」 チャ·イヨンの言葉に冬はくすくす笑った。 わずか数ヵ月前まで自分も同じように言っていたが、今は違った。 「恋人ができてみて、みんなきれいに見えるから」 「あなた 今、恋人がいると自慢してるの?」 「あ、」 「こんな日を一人で置く恋人は私も必要ないんだ?」 「死ぬ?」 泣きそうになった冬が殴ろうとすると、チャ·イヨンが走るように歩いた。 奴を追いかけていた冬は、一瞬、ひょっこりと立ったチャ·イヨンとぶつかった。 「どうしたの? 元カノでも見た?」 一緒に止まったギョウルが冗談を言いながらチャ·イヨンの反応を見たが、表情が良くなかった。 どうしたの? 思わず顔をそむけたテウルは、遠くで笑っているハン·ソジュンを見た。 そんなハン·ソジュンのそばには優しく手を握ったキム·ヨンホがいた。 二人は誰が見ても恋人のように見えた。 頭の中が真っ白になった冬は表情管理ができなかった。 幸いか不幸か、あの二人は冬を発見できなかった。 「冬よ」 チャ·イヨンが腕を握ったが、その手を振り払った冬はぼんやりとつぶやいた。 「私...先に行くよ」 「どこへ行くの。 あいつら、ついて行こうとしてるんだよね? 私も一緒に行こう!」 「私一人で行くよ」 「あなた 一人で何をするつもりだ! ダメ!私も行くよ!」 蔡英文は断固としていた。 結局、ギョウルはチャ·イヨンと一緒に二人を尾行した。 何がそんなに良いのか、ハン·ソジュンの顔から笑みが絶えなかった。 冬が好きだったその笑顔がですね。 何の精神で二人を追いかけたのか思い出せなかった。 気がつくと、2人は近くのオフィステルの中に入っていた。 キム·ヨンホがしばらく恋人のオフィステルで過ごしているという事実を知っていた。 店でキム·ヨンホの恋人に酒をおごってもらい、ついでに連絡先を交換したことがあった冬は、急いで携帯電話を取り出した。 震える手を引き締めてキム·ヨンホの恋人、キム·チャンヒョンという男に電話をした。 彼は冬の電話に少し驚いた様子だった。 大きく息を吸い込んだ冬は、心を引き締めてハン·ソジュンとキム·ヨンホが一緒にいるという事実を打ち明けた。 ちょうど近くで家族食事中だったというキム·チャンヒョンは、しばらくしてその前に現れた。 それまでオフィステルの前を淡々と守っていた冬は、冷静になるために気を引き締めなければならなかった。 3人は何も言わずにオフィステルの中に入り、湖を知っているキム·チャンヒョンの後を追った。 やはり予想は正確だった。 固く閉ざされた戸の隙間から興奮した男の信任が漏れた。 「わあ、狂った奴ら。 よく一緒に食べているね」 見るに見かねたチャ·イヨンが悪口をつぶやいたが、チャンヒョンとキョウルは何も言えなかった。 傷ついた彼らは無表情でドアだけをじっと見つめた。 このドアを開けると、私たちの愛が何でもなくなるようで怖かった。 でも、もう終わったんだろう。 冬は苦笑いしながら自分を見ていたチャンヒョンと視線を合わせた。 「開けてください」 その言葉を待っていたかのように、彼はためらうことなくドアロックの暗証番号を押した。 ぱっと開かれたドア越しに床に散らばった服と裸の状態で絡まっているソジュンとヨンホが見えた。 しばらく静寂が流れた後、ソジュンは大声を上げ、ヨンホは服で体を隠すのに忙しかった。 めちゃくちゃになったその空間で冬は虚しい笑いを爆発させた。 ハン·ソジュンを信じた。 理由もなく怒っても電話に出なくてもセックスを拒否し、携帯電話を手から離さなくても信じた。 いや、もしかしたら自分への気持ちが冷めたということをぼんやりと感じていたのだろう。 努めて否定した結果が目の前にあった。 不思議なほどひどく落ち着いた冬は、ハン·ソジュンをじっと見た。 チャンヒョンを見るやいなや、寂しくてそうしたと泣き叫ぶヨンホとは反対に、ソジュンは何の言い訳もしなかった。 あなたにとって私は何だったのだろうか。 私の愛は何だったのだろう。 たかがこんなものだったのだ。 苦笑いしていた冬は、そのまま背を向け、そこから抜け出した。 「冬よ!」 自分を呼ぶチャ·イヨンの複雑な声が聞こえたが、冬は止まらなかった。 無表情でその場を離れ、オフィステルを出た。 そして家まで歩いて行く1時間の間、何ともなかった。 ただハン·ソジュンと終わったという考えだけが頭の中にいっぱいだった。 そうするうちに家の前に到着した瞬間、冬はどっと涙が出た。 この家でハン·ソジュンと共にした幸せな思い出が浮び上がったためだ。 真冬の人生にも幸せというものがあるということを初めて知らせてくれた人だった。 出会いがあれば別れもあるが、少なくともこのようなやり方ではなかった。 固く閉ざされた門の前で、冬は静かに泣き出し、ハン·ソジュンを待った。 今からでも走ってきてぶら下がることを願ったが、あいつはついに現れなかった。 翌日の午後、姿を現したハン·ソジュンは、ありふれた言い訳もなかった。 この家に来た時、持ってきたスーツケースを持って堂々と出て行くだけだった。 もちろん、冬はそんなハン·ソジュンをつかまえて苦言も言えなかった。 このように彼らの愛が虚しく終わったということが信じられなかったからだ。 しかし、二人は別れ、その後の冬は愛を信じられなくなった。 その日の記憶は、クリスマスの悪夢のように毎年この頃、冬を苦しめた。 その日の冬とその場所に一緒にいたチャンヒョンもあまり変わらないだろう。 キョウルは慎重にチャンヒョンを横目で見ながら、先ほどラジオから出た言葉を思い出した。 「配偶者の浮気を知っていながらも、一生一緒にいられるのかという疑問がありますね。 「一度壊れた信頼は再び付けることができないでしょうから」 もしハン·ソジュンが悪かったと祈ったなら、チャンヒョンが泣きながらしがみついていたヨンホを許してくれたなら、今まで彼らは付き合っていただろうか。 冬ではないとはっきり言えるが、チャンヒョンは分からない。 4年という時間が過ぎたが、チャンヒョンが一人である理由を、チャ·イヨンはまだキム·ヨンホに未練が残っているためだと言った。 冬の思いもそうだった。 そうでなければ、これまで彼が一人である理由はなかった。 冬は静かにコーヒーを飲んでいるチャンヒョンを見た。 その視線を感じたのか、チャンヒョンが眉間にしわを寄せた。 「どうしてそう見るの?」 「あなた、会っている人はいないの?」 「どういうことだよ、私が会う人がどこにいるんだ。 あなたも何か変な噂聞いた?」 「いや、もともとおとなしい猫が先に後頭部を叩くものじゃないか、知らないだろう? 私にこう言っておいて、あなたが先に恋人を作っているのか」 「そんなはずないじゃないか。 私忙しいよ、忙しい人だよ。 芸能なんて。 僕はただ··· たまにあなた会ってお酒を一杯飲むことで満足している。 恋人より友達がもっと好きなんだ」 「私じゃないよ? 一生こうやって暮らそうって? たまに会って焼酎でも一杯飲みながら?」 「ちょうどいいね。 あなたも恋愛に興味ないから、二人で老後の備えでもしよう。 いや、老後の備えは私がするから、あなたは体だけ来て。 家事でもしてあげて。2人で花札でもしながら暮らそう。 退屈しないし、すごくいいよ」 「何度も洗脳させる?」 会う度にやってくる冗談に冬が叱ると、チャンヒョンはニッコリと笑った。 そんなチャンヒョンをじっと見ていた冬は、長いため息をついた。 そういえば、こうして出会ったのももう4年。 いつまでもこのように過ごすわけにはいかなかった。 「私は店の場所を取ったら、いい人に会ってみようと思う」 軽く投げた冬の言葉にチャンヒョンの顔から笑みが消えた。 このようなことを言うたびに出てくる同じ反応に、冬は淡々と理由を付け加えた。 「私がこの前言ったよね? 常連さんの中にゲイバーで見た人がいるんだけど、恋人とよく来るんだ。 すごくよさそうに見えたよ···. それが羨ましくもあるし。 まあ…···. いいんじゃないかと思って」 「イ·ジホじゃないよね?」 その名前を聞くやいなや、冬は飲んでいたコーヒーが喉に詰まった。 やっと咳を止めた冬は眉間にしわを寄せて言い放った。 「どうかしてるの?何の関係もないんだって? ずっとこうしてたら私本当に怒るよ? そんなゴミみたいなやつとどうしてしきりに絡むの?」 冬が真顔だったが、チャンヒョンは疑いを晴らさない。 私の言葉より話にならない噂を信じているようで気分が悪かったが、正確に指摘しなければならないようだった。 「その人間の顔をすごく明るくして、アイドルみたいなスタイルが好きなんだ、だから私は絶対に、死んでも違うんだ」 「お前がどうしたっていうんだ」 「私は可愛くはないじゃない。」 「いや、あなたかわいい。 可愛いね? 私の目には」 「あなた、好みが変に変わった?」 最後のチャンヒョンの言葉に、冬はニッコリと笑った。 可愛いのは。 誰よりも可愛いものとは程遠い冬だった。 それでも私の肩を持ってくれるチャンヒョンがありがたかった。 「私がちょっと可愛いよね、やっぱり私の真価を分かってくれる人はあなたしかいないんだって? とにかく、あなたも知っているように私はそんなゴミの種とは関わりたくない。 あ、そうだ。 その人と私と越えられない大きな山が一つある。」 「何?」 「2人ともトップだよ」 「確かだね」 やっとチャンヒョンの疑いに満ちた視線が消えた。 初めてチャンヒョンがいっそう余裕があるように見えた。 「お昼、時間ある?」 「いいのか?商売しないと。 なんで?」 「いや、久しぶりに来たんだから、ご飯でも食べに行こうぜ」 椅子に背をもたれた冬は、長い脚を組んだチャンヒョンをじっと見つめた。 町内の商売なので一日閉店すれば損害が甚大だったが、遠くから来た友人の提案を無視したりもした。 しばらく悩んでいる時、そうだと思ったかのようにチャンヒョンが突然言葉を投げた。 「ここに有名なおいしい店があったよ。 どうしよう。私が予約をしてしまったのに。」 「あなたは何も言わずに予約をするの? 本当に私が君の顔を見て今日だけ行ってあげる。 ちょっと待って。 ちょっと整理して」 こうなんだって。 自分を上手に扱うチャンヒョンをにらみつけ、冬は席から飛び起きた。 そういえば久しぶりにカフェを出て他の人と昼食を食べるような気がした。 そのためか。 まるで遠足に行く子供のように、訳もなく胸がどきどきした。 -----------------------------------------------------------
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