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俺は天井を見つめながら、深く息を吐き出した。静まり返った病室には、時計の秒針だけが規則正しく刻まれる音が響いている。無機質な白い天井はまるで俺の未来を映し出すかのように、何もない空虚さを感じさせる。 「あとどれくらい……なんだろうな」 自分でつぶやいてみたものの、その答えを知りたくはない。だけど、もう逃げ場はないのだ。俺の体は日々衰えていき、かつてのように自由に動けなくなっている。時間が限られていることは、痛いほどわかっている。 窓の外から秋の涼しい風が入ってきて、カーテンがゆっくりと揺れた。その風に誘われるように、俺は重たい体を起こし、窓際に移動する。 窓越しに見える星空は驚くほど美しかった。まるで天の川がこの世界と別の世界を繋いでいるかのような幻想的な光景。俺はしばらくその光景に見入った。 「こんな星空、昔はよく見てたな……」 夜空を見上げると、過去の思い出が頭の中に蘇ってくる。中学生の頃、サッカー部の帰り道に友達とふざけながら見上げた星空。高校生になってからは、勉強や部活で忙しく、星空を見上げる余裕なんてなかった。 それでも、あの頃は未来が無限に広がっているように感じていた。 だが今、未来は確実に閉じつつある。俺の体は、時間とともに確実に弱っていき、あとどれくらい生きられるかもわからない。 ふと、ドアが静かに開く音がした。 「星が綺麗だね、優斗」 振り返ると、白いワンピースを着た遥が病室に入ってきた。彼女もまた、同じ病院で治療を受けている仲間だ。 いや、仲間というより、今は唯一無二の存在。遥の顔を見ると、俺の胸が少しだけ温かくなる。彼女がここにいるだけで、少しだけ未来が怖くなくなる。 「遥……外に出てたのか?」 「うん。部屋の中ばかりじゃ飽きちゃうでしょ? 外の空気を吸いに行ってたの。お医者さんには無理しないでって言われるけど、そんなの気にしてられないよね」 遥は笑いながら俺の隣に座り、窓の外を見つめた。その横顔は美しいけれど、どこか儚げだ。彼女もまた、俺と同じく余命を宣告されている。 それなのに、彼女はいつも笑顔を絶やさない。それが逆に痛々しく感じることもあるけれど、俺にとっては救いでもある。
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