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その瞬間、俺の中で何かが始まったのを感じた。これからの未来は、彼女との新しい物語が始まるのだと。
遥と再び出会ってから数ヶ月が過ぎた。最初は戸惑いや驚きが混じっていたが、彼女と一緒に過ごす時間が増えるにつれ、心の中に新しい感情が芽生え始めた。
彼女は、あの遥ではない。それは理解している。けれども、彼女といると自然と安心できる自分がいた。
ある夜、俺たちは仕事帰りにふと立ち寄ったカフェで、コーヒーを飲みながら話をしていた。日が沈み、店内のやわらかな照明が二人を包んでいた。
「優斗さんって、優しいですね」
彼女はふと微笑んで、コーヒーのカップを持ち上げた。
「そうか? ただ、自然にやってるだけなんだけどな」
俺は照れくさそうに笑った。本当のところ、彼女といると昔の遥に向けていた気持ちが自然に表れてしまうだけだ。それを彼女がどう受け取っているのかは、わからない。
「でも、最初に会ったときから、どこか懐かしい感じがしたんです。私、あんまり自分の過去を話すの得意じゃないんですけど、優斗さんにはいろんなこと話せる気がして」
その言葉に、俺は少し驚いた。俺も同じように感じていたからだ。彼女と話していると、いつも自然体でいられる。
「俺もだよ。君と話してると、なんだか気が楽になる。まるで、昔から知ってる人みたいにね」
「そうですか?」
彼女は少し照れたように微笑んだ。その笑顔を見た瞬間、俺は心の奥底から込み上げてくる感情に気づいた。これはただの懐かしさや共感ではなく、彼女に対する特別な気持ちだということを。
「……遥、君に言いたいことがあるんだ」
彼女は少し驚いた顔で俺を見た。
「何ですか?」
俺は深呼吸をし、気持ちを落ち着けてから、彼女に向かって真剣な目で言葉を紡いだ。
「俺は、君と過ごす時間がすごく大切だって気づいた。君の笑顔を見ると、心が温かくなるし、君と一緒にいると自然に優しくなれるんだ。だから……俺は君が好きだ。昔の遥とは別に、君自身を好きになったんだ」
彼女は一瞬、驚きの表情を見せたが、次第にその顔が柔らかい微笑みへと変わっていった。
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