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エピローグ
星の上から優斗の姿を見守るのが、私の日常になっていた。時間の流れが止まったようなこの場所で、私はずっと彼の人生を見つめていた。彼が生き続けていること、それが私にとって何よりの慰めだった。
「あの頃の優斗は、まだ少年だったよね……」
私は静かに呟きながら、彼が大人になり、会社員として働く姿を見つめる。病気が治り、新しい生活を手に入れた彼は、これからの未来を歩んでいる。
私が共に歩むことは叶わなかったけれど、それでも彼が元気で生きていることが嬉しかった。
そして、彼の新しい出会い――彼の前に現れた、私と同じ名前、同じ顔を持つ女性。最初、私は驚いた。どうしてあの子が? 私と同じ姿をしているのに、優斗の心が彼女に引き寄せられるのを、複雑な気持ちで見つめていた。
でも、彼女が優斗の隣に立つ姿を見るたびに、心は少しずつ落ち着いていった。彼女はただ私の代わりではなく、優斗の未来にふさわしい存在だということが、時間とともにわかってきたからだ。
「優斗、今度こそ幸せになってね」
そう心の中で優しく語りかける。彼が新しい遥を愛し、共に未来を築いていく姿を、私は遠くから見守り続けることしかできないけれど、それで十分だ。
もう、私の存在は過去のもの。彼が私を思い出すことがあるかもしれないけれど、今彼の隣にいるのは新しい遥だ。
星空を見上げる彼の瞳に、どこか懐かしさを感じることもあるだろう。でも、それでいい。彼が幸せであれば、それ以上望むものは何もない。
「きっと、これが運命だったんだね」
私は星々の中で静かに微笑む。彼がもう一度愛を見つけたことが、私にとっては何よりの喜びだった。彼に新しい未来があり、彼自身が前に進んでいけるなら、私の役割は果たされたのだろう。
遥が優斗の手を取り、優しい笑顔を浮かべる。二人の姿は、まるで星々の祝福を受けているように輝いていた。
「いつかまた、どこかで会えるといいね」
そんなことを考えながら、私は静かに目を閉じる。これからもずっと、彼を見守り続けることを決めた。たとえ彼がもう私を思い出さなくても、私は彼の心の中で、どこか遠くで彼の幸せを祈り続ける存在として、ここにいる。
「さようなら、優斗。いつまでも、幸せでいてね」
星々が瞬く夜空の中で、私は優斗と彼の新しい未来を、穏やかな心で見守り続ける。そしてその瞬間、どこか温かい風が吹き抜け、星空が一層輝きを増した。
『ありがとう』
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