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「俺たち、こうして星を見られるのもあとどれくらいなんだろうな……」
俺は無意識に口をついて出た言葉に驚いた。自分で言っておきながら、その現実を突きつけられるような気がして、心の奥が冷たくなる。
「……そうだね。でも、今日みたいに綺麗な星空を見られるなら、それで十分かもね」
遥は笑顔を浮かべながら答えたが、その声にはほんの少しの震えが混じっていた。彼女だって怖いに違いない。それでも、強がっている姿を見るたびに、俺も自分を奮い立たせなければいけない気持ちになる。
「遥は、怖くないのか?」
俺は彼女の瞳を見つめて尋ねた。自分自身が感じる未来への恐怖を、彼女も同じように感じているはずだと、どこかで確信していた。
「怖いよ。もちろん。でも……」
彼女は窓越しに星空を見つめたまま、続けた。
「こうして優斗と一緒にいると、不思議と怖さが少しだけ和らぐんだ。私一人だったら、きっともっと怖いけど……優斗がいてくれるから、今は平気かな」
遥は小さく笑い、俺の手をそっと握った。その瞬間、俺は驚いた。彼女の手は小さくて、温かい。
これまで自分が彼女に何かをしてあげることなんてないと思っていたのに、彼女の言葉が俺を救ってくれることに気づかされた。
「俺だって同じだよ。お前がいなかったら、きっと俺はもっと早く諦めてたと思う」
俺は遥の手を少し強く握り返した。今この瞬間、俺たちは共に生きている。それだけで、未来への恐怖が少しだけ和らいだ。
「私たち、こうしてずっと一緒にいられたらいいのにね」
遥は遠くを見つめるように言った。彼女の言葉には、少しの悲しみと、少しの希望が混じっていた。
「一緒にいられるよ。きっと、どんな形であれ、俺たちはずっと一緒だ」
自分でもよくわからないが、そう言葉にしたかった。遥と一緒にいることが、どれほど俺にとって重要なことか。
俺たちは互いに支え合いながら、限られた時間を過ごしている。その時間は、たとえ短くても、かけがえのないものだ。 俺は遥の手を握りしめたまま、星空を見上げた。
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