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「優斗と一緒に、そんな普通のことがしたかったな……」 遥の声は少し震えていた。その声に、俺は胸が締めつけられる。 「ごめん、変なこと言っちゃって」 遥は無理に笑おうとしたが、その笑顔はどこか痛々しい。俺は彼女の手を握りしめたまま、深く息を吸い込んだ。どうして、こんなにも無力なんだろう。 俺たちは、未来に対して何もできない。どんなに願っても、この病が奇跡的に治ることはない。それでも、遥は俺に笑顔を見せ続けてくれる。 「遥、俺さ……」 俺は自分の言葉が出るのを抑えられなかった。心の中に溜まっていた想いが、溢れ出してきた。 「お前のことが好きだ。ずっと、ずっと好きだったんだ」 遥が驚いたように俺を見つめた。その表情が、ほんの一瞬固まったように見えたが、すぐに柔らかい微笑みに変わった。 「……ありがとう、優斗」 彼女はそう言うと、俺の手をさらに強く握りしめた。その手の温もりが、俺の胸にしみる。 「私も……ずっと好きだよ、優斗」 遥の目に浮かんだ涙が、彼女の頬を静かに伝って落ちた。俺はその涙を指で拭い、彼女の頬に手を当てた。 「これからも一緒だよ、遥。どんなに時間が限られていても、俺たちは……」 言葉が途切れる。自分でもどう言葉を続ければいいのかわからなかった。ただ、彼女と一緒にいられること、それだけが今の俺にとっての全てだった。 「そうだね、これからも一緒だよ」 遥は俺に微笑んで頷いた。その笑顔には、確かに愛情が溢れていた。それが俺にとって何よりも救いだった。 俺たちは限られた時間を知りながらも、こうしてお互いを想い合い、支え合っている。それがたとえ短い時間だとしても、俺にとってはそれが全てだった。
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