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遥……本当に、君なのか?
俺は頭が真っ白になり、思わず彼女に近づこうとした。しかし、同僚の紹介が続き、混乱の中でただ立ち尽くすしかなかった。彼女は俺のことを気に留める様子もなく、淡々と挨拶を続けている。
「優斗、大丈夫か?」
隣にいた上司が小声で囁くが、俺はうまく返事ができなかった。心臓が早鐘のように鳴り響き、呼吸が浅くなる。遥がいなくなってから、彼女と再び会えるなんて想像すらしていなかったのに。
研修が終わり、少しの時間が経った後、俺はどうしても彼女と話さずにはいられなかった。昼休み、廊下で偶然を装って彼女に声をかけた。
「……遠藤さん、ちょっといいかな?」
彼女が振り返る。驚いたことに、その表情はどこか親しみを感じさせた。
「はい、どうしましたか?」
俺は心臓の鼓動が速くなるのを感じながら、慎重に言葉を選んだ。
「君……名前が、遥って言ったよね?」
「はい、そうです。どうして?」
その問いに、俺は戸惑った。どうしてだろう? 彼女が遥と同じ名前で、同じ顔をしているだけで、同じ人だと信じたかったからだろうか?
しかし、もっと信じられないのは、彼女の雰囲気まで昔の遥と同じだということだ。
「君のこと、どこかで会ったことがあるような気がして……」
彼女はしばらく考える素振りを見せた後、首をかしげた。
「ごめんなさい、初対面だと思います。でも、よく言われるんです。昔の友達に似てるとか、誰かの面影があるって」
その言葉に、俺はさらに混乱した。これは偶然だろうか? それとも、何か運命的なものなのだろうか?
彼女が遥であるという確証はない。しかし、俺の心はそう信じたがっていた。
「そ、そうか……」
俺はそれ以上言葉を続けることができなかった。ただ、彼女の存在が俺の中に再び何かを呼び覚ましているのは確かだった。
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