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それから数週間、彼女との接点が少しずつ増えていった。仕事のやり取りをする中で、彼女の言動がますます遥と似ていることに気づく。
趣味や好きなもの、仕草まで、まるで生まれ変わった遥そのもののように感じられた。
しかし、彼女は過去の遥ではない。彼女自身の人生があり、彼女の記憶には俺はいない。そうわかっていても、俺は彼女に惹かれていく自分を止められなかった。
彼女が笑うたびに、俺の心は過去に引き戻される。彼女が困っていると、無意識に手を差し伸べたくなる。その感情が湧き上がるたびに、俺は再び彼女との再会が運命的なものであるかのように感じていた。
ある日、仕事が終わった後、彼女と一緒に帰る機会が訪れた。夕暮れの街を歩きながら、俺はついに彼女に聞かずにはいられなくなった。
「遠藤さん、もし変なことを聞いていたら申し訳ないんだけど……君は、昔何か大きな病気をしたことがある?」
彼女は少し驚いたように俺を見た。
「ええ、実は……幼い頃に重い病気をしていたんです。でも、奇跡的に回復して、今はこうして元気に生きています。どうしてそんなことを?」
彼女の答えに、俺の胸が高鳴った。それはまるで、遥が戻ってきたかのような感覚だった。
「いや、なんとなく……君と話していると、昔の大切な人を思い出すんだ。君と同じ名前で、同じ顔をしていた人がいたんだよ」
彼女は静かに頷き、遠くを見るように空を見上げた。
「不思議ですね。もしかしたら、何か縁があるのかもしれませんね」
彼女のその言葉に、俺は確信した。たとえ過去の彼女が戻ってくることはなくても、目の前にいる彼女が新しい「遥」なのだと。俺たちの運命は再び交差したのだ。
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