生徒会長と問題児

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「そのくらいにしときなよ、”悠斗(はると)”」 「ん? おぉ、”悠汰(はるた)”じゃんか。生徒会の会議は終わったのか?」 僕に呼ばれて振り返った片割れの頬に血が付いている。おそらく返り血だろう。 楽しそうな悪い笑みを浮かべていた”悠斗”は、ネクタイを緩めブレザーの前ボタンをあけ、スラックスからシャツを出している。つまりは盛大に制服を着崩している。 ここに風紀委員がいれば問答無用で雷が落ちるだろう。 そんな”悠斗”の足元には、顔を痣だらけにして伸びているうちの生徒たち。”悠斗”までと言わずとも、そこそこ素行不良な面々が転がっていた。 「終わった。今は副会長が片づけをしてくれてるよ」 「はぁ~。真面目なことで」 ため息を吐いた”悠斗”は、ワックスで上げていた髪に指を入れ、くしゃくしゃとセットを崩した。 その顔はさっきまでの喧嘩が楽しいというような笑みはない。 「こら”悠斗”。まだ外だ」 「そうだった。うっかりうっかり」 僕の指摘に、”悠斗”は笑みを浮かべて髪を上げた。 「帰れるんだったら帰ろーぜぇー」 「一緒には無理だよ」 「わぁかってるって。ちゃんと距離開けて歩くからさぁー」 僕の肩に腕を回した”悠斗”の頬に着いた血を、ブレザーのポケットから出したハンカチで拭ってやる。 「荷物取ってくるから。今日は先を歩いてなよ」 「はーい。って、こいつらどうしよ」 「……忘れてたね。あー、先生を呼んでくるよ。あとは先生に押し付け……こほん。任せよう」 「ん。じゃー早く追いかけてきてな」 「あぁ」 花壇の隅に落ちていた鞄を拾い上げ軽く土を払った”悠斗”は、無邪気な笑みで僕に手を振って門の方へ歩いて行った。
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