”悠斗”と”悠汰”

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”悠斗”と”悠汰”

少し時間差を開けて家に帰った僕たちは、”悠汰”の部屋で同じ顔を突き合わせて今日あったことの情報交換をした。 「”悠斗”は? 今日何があった?」 「んー。2時間目をサボって屋上で昼寝。4時間目は体調不良って言って保健室で昼寝。6時間目は机に突っ伏して寝たふり。あとは教室にいたけど、授業は聞き流しを装ってノートは落書きだけ。実際はちゃんと聞いてたから問題なし」 ”悠斗”は今日の出来事を時系列に話してくれる。 僕はそれを頷きながら聞いていた。 「放課後は知ってる通り喧嘩。向こうから吹っ掛けてきたよ」 「理由は?」 「しょーもない。調子乗りすぎでウザい~ってやつ」 ”悠斗”が面倒くさそうに手を払いながら言った。 誰にどんな攻撃を仕掛けた、仕掛けられた、なんてことも詳しく教えてくれた。 「こっちはそんな感じ。”悠汰”のほうは?」 「授業時間はいつも通り。放課後は生徒会で会議。議題はもうすぐある体育祭について。資料はこれね。メモも全部してある」 「お、分かりやすーい! さっすが”悠汰”!」 スクールバッグから出した会議資料を見せると、”悠斗”は即座に目を通した。 「ふんふん、オッケー。で、明日はどうする? 今日の喧嘩で怪我はしなかったから、俺どっちでもできるけど」 「じゃ、明日は変わって。会議ってダルくてやってられない」 僕は座っているのも疲れて後ろに倒れ、床に大の字になった。 僕たちは気まぐれに入れ替わる。 優等生の生徒会長が”悠汰”。 素行不良のヤンキーが”悠斗”。 親でさえ気づかない。 僕たち本人ですら、本当はどっちがどっちだったか忘れてしまった。
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