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そんな3人暮らしも一年が過ぎた。はるえの献身のおかげで、高畠はまるで前妻がいた頃のように精力的に働けるようになっていた。未羽も亡き母を想いながらも、はるえを母のように慕い、心を寄せていた。
ある日、庭先で未羽が大きなアゲハ蝶を見つけた。
「あら、大きいわね」とはるえが声をかけると、
「ここ最近、よく来るんだ。あ、私のところに……」と言いながら、アゲハ蝶が未羽の服の上にピタリと止まった。その服は、亡き母が洋裁を得意として作った特別なものだった。
「ブローチみたい……もしかして……」はるえはふと考え込む。
「もしかしたら、そのアゲハ蝶、お母さんかもね」
「どうして?」
「よく言うでしょう?亡くなった人が何かに姿を変えて、大切な人のもとに戻ってくるって」
蝶はなかなか飛び立たず、未羽の服にじっととまっていた。
「……そういえば、お母さん、蝶が好きだったんだ」
「じゃあ、きっとお母さんだね。私も夫を亡くしたとき、よくてんとう虫が私の周りに来ていたの。まるで、悲しむ私に寄り添ってくれているみたいに……」と、はるえは亡き夫を思い出し、少し遠くを見るような表情をした。
未羽は少し考えた後、ふいに問いかけた。「はるえお母さん……前の人の方が良かった?」
「えっ……」
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