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踊り子
はじめて彼女を見たときの衝撃は、紘一の中からずっと出て行かず、ぐるぐると渦巻いては熱い炎を噴き上げていた。
小さな舞台で踊る彼女。飛び散る汗と、羽衣のごとく脱ぎ捨てられていく衣装。さらされた白い肌に、紫とピンクの照明がまだらの模様を描く。
あの晩、酔っぱらった職場の先輩に連れられてストリップバーを訪れた紘一は、いかにもいかがわしいバーの雰囲気に辟易し、店の隅のカウンターで水割りのウイスキーを啜っていた。どうしても付き合え、と言い張って紘一をここまで連れてきた先輩は、隣でうとうとと舟を漕いでいた。
ワンステージだけ見たら、それで先輩への義理は果たしたと思って、先輩を起こして店を出よう。
そう心に決めた紘一は、好きでもない酒を舐めながら、斜め前にある小さな舞台を見るでもなく眺めていた。
まずはじめに、はたちになってもいないのではないかと思われるような、短い髪の少女が舞台に上がった。身に付けた衣装はセーラー服を模していたけれど、それが女学生と言うよりは水兵さんに見えるくらい、はつらつとした印象の、痩せた少女だった。少女は快活な音楽に合わせて活き活きと踊り、衣装を順々に脱いで裸になっていく。舞台にはかぶりつきで見ている男も何人かいて、紘一は、そんな男たちの情熱が理解できないまま、ぼんやり酒を流し込んでいた。
二人目に舞台に上がったのは、30過ぎくらいだろうか、ふっくらとした身体と衰えの見えない肌をした、とにかく色っぽい女だった。衣装は幾重にも重ねられた花魁風で、その大げさな装束が浮かないくらいに、舞台映えする女だった。女は、ゆったりとしたジャズに合わせて身体を揺らし、世界中の男を誘惑するみたいな目をして肌をあらわにしていった。かぶりつきの男はさっきの少女の時よりずっと増えていて、紘一も少しだけ、かぶりつきの気持ちが分かった気がした。
そして、最後に舞台に上がったのが、彼女だった。はじめの少女のように若くもなく、次の女のように色っぽくもない、20代半ばくらいの女だった。はつらつとした明るさも、世界中の男を誘惑するみたいな色気もなかった。なのに、かぶりつきの男たちの数は増え、その視線にも、女の肌に突き刺さるのではないかと思うくらいの鋭さがあった。なぜだろう、と、紘一は不思議に思った。不思議に思って、軽く首を曲げて正面から女の舞台を見やった。その瞬間、彼女が踊りだした。
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