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「お父さん、帰ってこないねぇ」
子供部屋で息子を寝かしつけながらつぶやく。
男の子で、名前は『翔(しょう)』
我が子は愛しいけれど、幸せとは言えない日々になっている。
夫が私に対して冷めてしまって、飲み屋の女性店員へと夢中に
なって、夜はほとんど家にいないからだ。
「適当な恰好ばかりしないでくれよ。
俺が稼いでるのに、みっともなく見られるだろ、
そのスニーカーだって、いつまで同じの履いてるんだよ」
職場は制服だから通勤着なんてどうでもいい。
この白のスニーカーは履きやすいから気に入ってる。
私は足の形に特徴があるから、履ける靴が探しにくいのよ。
「相変わらず汚い部屋だなあ、掃除する時間あるだろ、
俺より短時間勤務なんだから」
小さい子がいると、片づけてもすぐ散らかるものよ。
「あー、どうして結婚したんだっけ」
一生、幸せにするって言ってくれたよね。
「髪の綺麗な女がいいなあ」
紺の背広に別の女性の髪の毛、ついてたね。
心が、毎日、毎日、泣いている。
胸の中の雨がやまない。
翔の存在が、私に降る雨の傘になっていた。
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