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「ママ、お歌、歌って。ネギが追いかけてきそう」
子供部屋のベッドの上で、不安げな顔で翔が言う。
遺伝なのか、翔も私と同じくネギが嫌いだ。
夫が無理矢理に食べさせようとして、泣きまくったあとだった。
「いいよ、子守唄、歌ってあげる。
でもね、この歌は、雨の日には歌ったらダメなの」
「なんで?」
「死んじゃった人が来るから」
「やだ、やだ、こわいよぅっ」
「あぁ、ごめん、ごめん、今日は雨じゃないから大丈夫よ」
私は歌った。
母と父のことを想いながら。
会いたいと願いながら......。
だけど夜空は、澄んだ丸い月に照らされていた。
それを美しいと思える心の余裕は無かった。
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