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翔が小学生になる前に離婚しようと決意していたけれど。
その必要が無くなった。
少しの具合いの悪さから病院に行ったら、癌を宣告されたからだ。
お母さん、お父さん、そっちに逝けるよ。
だけど翔、翔を残すことが悲しい。
「真保、いままで、冷たくして、ごめんなさい......」
そう言って泣いてくる夫には、何も感じなかった。
どうせ私が死んだら、すぐに再婚するんでしょ?
飲み屋の女の子じゃなくて、別の相手ができたこと、知ってる。
でも、結婚相手に失敗した自分のせいでもあるよね。
私の両親は間違いなく純愛だった。
いまは、それがよくわかる。
「翔、寂しいよ、お歌、歌って」
もう身体を動かすのが辛い。
翔が泣きながら歌い始めた。
私が歌っていた子守唄を。
「翔、その歌、おぼえてくれたんだね。
でも、翔、その歌は、雨の日には......」
そこで私の意識は途切れた。
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