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母と手をつないで夕暮れの街を歩く。
おぼつかない足取りの私、たぶん四~五才くらい。
幼稚園児だったのは記憶してるから。
母の持つ袋からネギが出ていて、ネギが嫌いな私はネギを叩いて
『やめなさい』と、何度も言われる。
そして私が歌い出す。
「真保(まほ)その歌......どうして歌えるの?」
母の足が止まった。
「なんでかなあ?なんでか知ってる。
でもねえ、この歌、あんまり好きじゃないよ」
「子守唄」
「え?」
「真保が赤ちゃんの頃に、寝かしつける為に歌ってた」
「そうなんだ?」
「でも真保は、歌うと嫌がって泣き出したりした」
「そうなんだー?」
私は好きじゃないと言いつつ、大声で歌った。
「やめて!」
厳しく怒らない母が、珍しく大声を出した。
私は驚いて立ち尽くす。
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