第1章 出逢う

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「僕はそこら辺の羽虫以下です! だから、その、可愛いとか、きれいとか。そういうのと僕は、縁遠いです!」  ぶんぶんと首を横に振ってそう告げる。今度はエカードさんがぽかんとする番だったらしい。  でも、彼はすぐに眉間にしわを寄せた。まるで、痛々しいものを見るような目だ。 「……なんだろう。自己肯定感が底辺というか、地面にめり込んでいるというか……」 「はい、もう地層の奥深くにめり込んでいます……」  師匠にも、それはよく指摘される。が、自己肯定感なんて幼少期に培われるものだ。僕はもうすでに二十歳。今更上げるなんてこと出来るわけがない。 「……独特の、言い回しだな」  エカードさんが頬を引きつらせている。それを見たからか、キリアンさんが「はぁ」と大きくため息をついていた。 「別に自己肯定感が地面にめり込んでいようが、地層の奥深くにめり込んでいようが、実力があればいいだろ」 「そりゃそうだけれどさぁ」 「俺らは仲良しこよしをするわけじゃねぇんだから」  何処か距離を置くように、キリアンさんが冷たい声で吐き捨てる。  ……そうだ。彼の言うことは正しい。 「そ、そうです、よね……」  わかっている。わかってはいるのに……どうしてか、気持ちが沈む。  あれだけ怖いと思っていた勇者や剣士の人。それなのに、話してみると割とフレンドリーというか、面白いというか。  そういう人たちだったからこそ、僕は勘違いをしてしまっていたんだろう。  ……もしかしたら、仲良くなれるかもって。
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