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「僕はそこら辺の羽虫以下です! だから、その、可愛いとか、きれいとか。そういうのと僕は、縁遠いです!」
ぶんぶんと首を横に振ってそう告げる。今度はエカードさんがぽかんとする番だったらしい。
でも、彼はすぐに眉間にしわを寄せた。まるで、痛々しいものを見るような目だ。
「……なんだろう。自己肯定感が底辺というか、地面にめり込んでいるというか……」
「はい、もう地層の奥深くにめり込んでいます……」
師匠にも、それはよく指摘される。が、自己肯定感なんて幼少期に培われるものだ。僕はもうすでに二十歳。今更上げるなんてこと出来るわけがない。
「……独特の、言い回しだな」
エカードさんが頬を引きつらせている。それを見たからか、キリアンさんが「はぁ」と大きくため息をついていた。
「別に自己肯定感が地面にめり込んでいようが、地層の奥深くにめり込んでいようが、実力があればいいだろ」
「そりゃそうだけれどさぁ」
「俺らは仲良しこよしをするわけじゃねぇんだから」
何処か距離を置くように、キリアンさんが冷たい声で吐き捨てる。
……そうだ。彼の言うことは正しい。
「そ、そうです、よね……」
わかっている。わかってはいるのに……どうしてか、気持ちが沈む。
あれだけ怖いと思っていた勇者や剣士の人。それなのに、話してみると割とフレンドリーというか、面白いというか。
そういう人たちだったからこそ、僕は勘違いをしてしまっていたんだろう。
……もしかしたら、仲良くなれるかもって。
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