第1章 出逢う

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 僕たちが案内されたのは、先ほどの間からかなり離れた部屋だった。  その部屋はまさに豪華絢爛。ほうっと見惚れる僕を他所に、共に旅をする仲間だという二人はソファーに腰掛ける。  長いソファーに先ほどの黒曜石の目の彼。僕ともう一人は、それぞれ一人掛けのソファーに腰掛けた。  王城の侍従が紅茶と軽食を持ってきてくれる。軽食はサンドイッチだ。それぞれ挟んである具材が違うみたいで、見ているだけでも楽しい。 (正直、すっごくお腹が空いてたんだよねぇ)  緊張から、朝から食事が喉を通らなかった。だから、今になってお腹はぺこぺこ。  けど、なんだろうか。室内の空気はサンドイッチをつまめるような状態じゃない。  誰もなにも言わない中、僕はおもむろにティーカップに手を伸ばして、口に運ぶ。ふわっと香る茶葉の香りに、僕の心が少しだけ落ち着いた。 「……さて、このまま黙っていてもなにも進まない。とりあえず、自己紹介をしよう」  黒曜石の目の彼……ではなく、もう一人のほうがおもむろに声を上げる。  彼は銀色の髪の毛を後ろで撫でつけていて、その真っ赤な目は鋭い。それに、彼は大柄だ。背丈も高くて身体つきもがっしりとしている。雰囲気も、顔立ちも。第一印象は全部が怖い人。  でも、なんだろうか。彼は割と人を見ているというか、気配りが出来る……みたいな人だった。 「俺はエカード。ハイネン男爵家の三男坊だ」  銀色の髪の毛の彼――エカードさんが、そう自己紹介をしてくれた。……というか、彼はお貴族さまなんだ。
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